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ペトルーニャに祝福をのおぺちょぺのレビュー・感想・評価

ペトルーニャに祝福を(2019年製作の映画)
4.2
原題は『God Exists, Her Name Is Petrunija』(神は存在する、彼女の名はペトルーニャ)。紛れもない傑作。

「伝統」といえば聞こえはいいが、それを盾に行われる、ペトルーニャへのえげつない行為の数々。直接的な暴言・暴力はもちろんだが、彼女が口を開いた瞬間に言葉を遮る警察署長の無自覚な行為が一番こたえた。さらに、同性の年長者である母からも差別の継承というべき言葉が浴びせられる。
彼女が学生時代に「歴史」を学んでいたということも示唆的だ。差別の歴史は繰り返され、今も続いている。
北マケドニアが舞台ではあるが、日本でも嫌というほど見る出来事ばかりだった。

彼女が警察署から出るシーン。
文字どおり、十字架を背負い、その道中に民衆から罵倒される(その中にキリストそっくりの男性がいたりもする)。
そして強烈かつ鮮烈なラスト。まさに、「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」(ルカによる福音書23章34節)と祈りを捧げるかのような彼女の行い・・・。
まさに原題のとおり、彼女が神(の子)なのだと知り、心を大きく揺さぶられた。
ただ、愚かな民衆の心が改心するはずはないので、彼女が悟りの境地に達して、これらの責苦を「受け入れる」ことしか解決法がないのだというのも、現在の女性の立場と重なって非常に苦々しい思いだった。

ジャングルデザインの取調室の壁ってどういうことなんだよと笑ってしまった。お母さんへのダウン攻撃とか、ちょこちょこ入るユーモアの切れ味もたまらなかった。