うえびん

ペトルーニャに祝福をのうえびんのレビュー・感想・評価

ペトルーニャに祝福を(2019年製作の映画)
3.1
背負った十字架
幸せへの十字架

2019年 北マケドニア作品

男だけの祭りに飛び込んで、幸せの十字架をとった女性をめぐる大騒動。冒頭のヘビメタっぽいBGMから激しい展開を予想するも、終始、静かな沈んだトーンの作品だった。

初北マケドニア映画。国のこともよく知らないので、調べてみた。

東ヨーロッパのバルカン半島南部に1991年に建国された共和国で、その前は旧ユーゴスラビア連邦の一部だった。ユーゴスラビア紛争(1991-2001)で激戦地となったクロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナと違って平穏に独立を達成。南にギリシャ、東にブルガリア、西にアルバニア、北にセルビア、四方を他国に囲まれた国。2020年にNATOに加盟している。人口は208万人(2020年)、宗教はキリスト教(マケドニア正教)70%、イスラム教30%。男女平等度ランキング(2020)は69位/146ヵ国、国際競争力(2019)は82位/141ヵ国。

実話に基づく物語のようだけれど、宗教的・文化的な背景を詳しく知らないので、ペトルーニャやTVリポーターのスラビツァの心境が想像しきれなかった。監督が描きたかったのは、古き伝統に根付く男尊女卑、男女格差、それに立ち向かう一人の女性だろうということは想像できたんだけれども…。女対男という対立構造、会社の人事担当やフーリガンのような若者たち、警察官のセクハラやパワハラやモラハラが酷すぎて、これも実話ベースだとするとマケドニア国民の民度の低さが疑われてしまうけど大丈夫だろうかと心配になるくらい。

先の男女平等度ランキングでは、日本は116位でこのマケドニアよりも低い順位。身の回りには、本作に描かれるような男尊女卑やハラスメントは見られないけれど、見えないところにあるんだろうか。それとも、このランキングの評価基準がずれているんだろうか。

マケドニア人の多くが信仰する東方正教は西方のカトリックやプロテスタントに比べて伝統を重んじるのが特徴だという。ペトルーニャのとった十字架を神聖なものといい、その神聖なものをとった女性を罰当たりなバケモノと罵る。男性がとるか、女性がとるか、その違いだけで世間が大騒ぎになる十字架。ペトルーニャがとったことで巻き起こった騒ぎは、彼女がこの地で女性が背負った十字架の象徴であるように感じられた。同じ十字架を男性がとったら幸せの象徴となる??その意味が僕にはまだ十分に分かりません。
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