トッキー

カニバ/パリ人肉事件 38 年目の真実のトッキーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

パリ人肉事件の犯人として有名な佐川一政を題材としたドキュメンタリー作品。

内容は現在の佐川一政と、その弟である佐川純の口から語られる告白が主。

まず最初に10分ほど佐川一政の告白。
佐川一政自身がもうまともな会話も充分に出来ない状態の為、非常にテンポが悪い。
年齢や身体的な事情を考えればそれはしょうがない事であるけれど、とにかく冒頭からして引き込まれる様な物を感じられず、やたらとどうでも良い映像をゆらゆらと揺らしながら撮ったり、意味も無くぼかしたり、佐川一政の不気味さを演出しようとしているのかは分からないがとにかくセンスを感じられない。
ようやく場面が切り替わったかと思ったら佐川一政が女性とSEXをする映像が3分程度映し出される。

そしてその後また現在の佐川一政と弟である佐川純の映像に切り替わり、かつて佐川一政が描いた「まんがサガワさん」のページをペラペラとめくりながら話が進む。

内容が内容な為、世に出た後すぐに絶版になったが、「パリ人肉事件38年目の真実」と言うご大層な副題を付けておいて、かつて佐川一政が描いた漫画をダラダラダラダラと映す必要性も感じられない。

そしてまた場面が切り替わり、佐川一政が家族と過ごす幼少期の映像がやたらダラダラと流される。

個人的な文句ではあるけれど、
この時点で一度言いたいのは、
佐川一政と言う人間に興味を持って映画を観に来ている人間が、佐川一政の幼少期の映像を観せられても何も面白くも無いと言う事だ。
この作品の邦題に「パリ人肉事件38年目の真実」と言う副題を付けていなければまだ擁護のしようもあるが、あまりにもこの尺の使い方は酷い。

人を殺し、その肉を食った人間にも普通の人間と同じ様に可愛い少年時代があったと言う事を伝えたいのか?
もうこの時点でストレスは限界に近かった。

そしてその後は弟である佐川純が腕に有刺鉄線を巻きつける映像が流される。
佐川純に自傷癖がある事は知っていたが、そんな事は「パリ人肉事件38年目の真実」と何の関係も無い。
鑑賞中にこの映画のタイトルは「佐川純 自傷癖の真実」ではなかった事を頭の中で確認した。

映像はまた切り替わり、現在の佐川一政がヘルパーから介護される様子が映し出される。
ここでヘルパーは佐川一政にかつて自分がゾンビの役の話をしている。
かつてゾンビの役を演じた事があると言うヘルパーが佐川一政の介護をしているのは偶然か、意図された物なのかは分からないが、ここでの佐川一政はヘルパーの話を不気味な笑顔で聞いている。
ゾンビと言えば、人の肉を食らう化け物だ。
同じ様に、過去に人の肉を食った佐川一政の関連付けようとしているのだろうか?
とにもかくにも訳が分からない。

この作品は
現在の佐川一政の異常性を映したかったのか、
佐川一政も元々は普通の人間であったと言う事を言いたかったのか、
それとも佐川一政の本当の恐ろしさはこの底知れない不気味さである事を言いたかったのか。

作り手にこれらの質問をしてどの様な返答を得られるのかは分からない。
けど少なくとも僕はこの映画を観てパリ人肉事件の真実が何だったのかを知る事は出来なかったし、劇中の佐川一政からも核心に迫った言葉を聞く事は出来なかった。
パリ人肉事件の真実、もっと言えば佐川一政と言う人間の真実は各々の解釈に任せると言う事なのだろうか?

そんな事を考えるのももはやアホらしいが、唯一の評価点はこのどうでも良い90分の映像を更に引き伸ばして2時間の映画にしなかった事だろう。

佐川一政について知りたい人は、Wikipediaでも見たほうが余程よく分かると思う。

以上。
トッキー

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