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風をつかまえた少年のtheocatsのレビュー・感想・評価

風をつかまえた少年(2019年製作の映画)
3.5
実話ベースでなければにわかに信じ難い話

風車で自転車のタイヤを回し、タイヤに接触させた小型ダイナモで電力を発生させその電力をバッテリーに充電、充電した電力で地下水くみ上げ用ポンプを回し、くみ上げた水で畑を灌漑。ということが可能だったのかと目が点状態。
実話ベースというのだからそのまま受容するほかあるまいて・・・


シナリオはアフリカ最貧国マラウイで干ばつ飢饉が起きた時に、上の方法で作物栽培を可能とさせ、壊滅状態だった村を救った少年のお話。

しかしそれは最終盤の展開であり、序盤は貧しさゆえ授業料を払えず退学、飢饉のため食料泥棒に襲われ姉も男と駆け落ちなど家族崩壊・地域壊滅の危機が描かれ、加えて、「民主的に」村の救済を大統領に直訴した族長が取り巻き達にぼこぼこに痛めつけられるなど、建前だけの民主主義の問題点を皮肉る場面も。
「民主主義は輸入した果物みたいなもの。すぐ腐敗する・・」という主役父親のセリフは現代日本に当てはめることも可能と思われた。

他に民主主義=資本主義の害悪面としてタバコ栽培の為に貧しい農民たちに金をちらつかせては土地の樹木を買い上げ、バッサバッサ木々を切り倒したために洪水が起こるなど、環境破壊問題も盛り込まれる。

それら全てを詰め込むことでいささか窮屈かつ間延び感が生じてしまったが、その過程があってこその風車発電という落ちはある程度納得できる構成ではある。

しかし、疑問点として灌漑だけが問題だったのであれば村中総出人海戦術で井戸から水をくみ上げ続け灌漑するという方法や、電力を起こさずとも風車で直接水汲み用ロープを巻き上げ灌漑するということも可能だったのでは? という考えが頭をかすめたりもした。
まぁそんな素人考えでは対処できない状況だったということかもしれず、少年が作った素朴な風力発電機が実際の窮状を脱却したということなのだからそれで無問題ということ。

3.5の三ツ星
012102
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