萩原くわがた

ロボコップ ディレクターズ・カット版の萩原くわがたのレビュー・感想・評価

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人生で一番好きな映画。20回は見ていると思う。

1人の警察が死に、改造され治安ロボットとして働かされる。しかし彼は平和への想いで作られたわけではなかった…。という、正義のヒーロー誕生の話かと思いきや、実は歪みに歪み切った様々な状況から発生した存在、それがロボコップなのだ。

舞台となるデトロイトの治安は完全に地獄状態で警察もストライキを検討。殉職者は続出だけどそれは仕方のないこととしてなんの対策も取られていない。何故なら警察という組織そのものを企業が運営しているから…。この設定からとんでもなく歪んでいる。凄まじい。しかしよく考えてみると、つまりは鬱の社員が出てもまともな対策を取らないブラック企業とやってることは同じでなかなか日本人に馴染みのある流れだったり。
ロボコップが誕生してからのシーンの流れもすごい。普通のアクション映画なら街のピンチに颯爽と現れるシーンを視聴者とロボコップのファーストコンタクトにするのだろうが本作はそんなヒーロー扱いをせずに、充電器のような椅子で機能確認をするシーン。そして奴の食べ物はこれだとベビーフードのような茶色いジェル。
カッコイイ犯罪撲滅シーンは掛けねなしにカッコいいのだが、後に我々はかっこいい部分だけを意図的に見せられていることに気づく。テレビの報道と同じで、彼に感情移入していない瞬間は彼がかっこよく見えるが一転して本人の自我に関わるシーンになるととんでもなく哀れになる。ここら辺の見せ方は本当にうまい。

映画自体の時間は1時間半もなく短めなのだが、歪み切った情勢や企業、ロボコップ誕生の光と闇と彼の自我について。これらがスルスルと脳に入り込んでくるところがこの映画の凄いところ。
冒頭のニュース番組を用いたシーンに代表されるが、とにかくスタイリッシュで自然にシーンが進む。ワンシーンごとに載っている情報量は確実に多いはずなのに堅苦しくなく説明的にならず、むしろ更にその上にブラックジョークやスプラッターなどの遊び心さえ仕込んで見せてくれる。回想シーンの入れ方なんかも巧妙で、一切中弛みの瞬間がない。本当にラストの1秒までが簡潔で必須で娯楽的で、どうやって考えればこんな気持ち良い映像を80分も作れるのか分からない。見るたびに感動してしまう。
ロボコップはマイベスト映画としてこれからも永遠に君臨し続けるだろう。視聴後は必ずそんな気持ちになる。