ちろる

スキャンダルのちろるのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
3.9
おぞましいほどあからさまな、セクハラスキャンダルの裏側。
あまりにも日本と違うあからさまなカルチャーなので、日本人の女性が採用するべきバイブルとしてはまだ敷居が高すぎる。
が、しかしアメリカの政治とメディアの関係性について学ぶためには意外とタメになる作品だったと思う。
因みに私は昔からアメリカの大統領選挙が好きで、大学もアメリカ政治学の授業が一番楽しみだった。
なんでかって言えばめちゃくちゃ醜いdisり合戦、敵を陥れるためにフェイクニュースだって厭わない、そんな生々しい戦いが国民も熱狂してるのが羨ましかったから。
そんな激しいのが当たり前の選挙合戦の中で一際毒々しい存在感を放っていたのが紛れもない現在のアメリカ大統領トランプの選挙戦だ。
物語は主人公のうちの1人のFOXのアンカーキャスターメーガンにジャバザハット似の上司ロジャーから、当時は共和党の癌みたいな存在であったトランプをコテンパンにするように言われ、インタビューでトランプと激しい喧嘩合戦になるところからスタートする。
ちなみにFOXは、アメリカではめちゃくちゃ共和党派の政治を動かすほど保守派にいろんなプロパガンダする政治的な権力持ってるチャンネル。
そのFOXを実質仕切ってるロジャーが同FOXのアンカーであったグレッチェン(ニコール・キッドマン)に突然セクハラで訴えられるところから、安泰だったFOX内は大パニック!

このグレッチェンのセクハラ訴訟自体は意外にも、サラッと描かれてるのだけど、この話の面白いところはロジャーのセクハラ発覚した時の社内のめちゃくちゃ異様な雰囲気。
①恐らく過去にセクハラされていて、動揺するキャスターやスタッフ。
②まったくされた事ないから、FOXの存続のためにロジャーを守ろう運動をする男性陣やロジャー好みでなかった女性陣
③セクハラされたけど、思い出したくない過去を封印してキャリアのために②に回る女性陣
この中で、一際動揺を隠せずにいたのがロジャーとずっと良い上司と部下の関係を結んでたアンカーウーマンのメーガンと、そして今まさしくオンタイムでロジャーにセクハラされまくってた若手キャスターのケイラ(マーゴット・ロビー)。
この3人の美女が下す決断が、アメリカNo. 1チャンネルFOXをどう動かしていくのか?
ムズムズするラストの雰囲気も含めてさすが実話です。

ちなみにケイラのキャラは架空らしいのだけど、個人的にはこのケイラの野望と弱さは多くの人間が共感するのかもしれません。
もちろん一番かっちょいいのは誰にも相談せずに一人で戦ったグレッチェン姐さんですが、キャリアを捨てる覚悟で挑んだメーガンの決断も自分だったら出来る気がしない。
このめちゃめちゃかっこいい姐さん2人とエロオヤジロジャーもすべて実名で、しかとまだ最近の出来事を映画化とか、やっぱハリウッド自由度半端ない。
#metoo運動に乗っかった、フェミニズムばりばりの深刻な作品ではなくて、おぞましいセクハラ事件の事実をみせつつ、エンタメ性に長けたテンポのよい脚本が魅力の作品でした。
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