ワイカ

スキャンダルのワイカのネタバレレビュー・内容・結末

スキャンダル(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 観る前は、テレビ局に勤める女性たちがセクハラを巡ってバトルしたり、熾烈な足の引っ張り合ったりするシニカルなブラックジョーク映画を想像していたら、全然違って、米大手テレビ局フォックスニュース会長のセクハラを訴えた女性キャスターたちの実話を描いたとてもマジメな映画でした。

 事件の関係者のほか、トランプやらマードックやらが実名で出てくるのがすごい。つい最近の、しかも相当な力のあるテレビ局の不祥事なのに、こんなに早く生々しく描けるのもさすがのハリウッド。

 セクハラ事件といえば、ハリウッド映画プロデューサーのワインスタイン事件が記憶に新しいけど、それより前に明らかになっていたこちらの事件は、日本ではあまり大きく報じられた記憶がなく、事実自体を知りませんでした。こんなハレンチなことが、こないだまで全米有数のテレビ局で行われていたなんて驚きです。

 こういう映画を観ると、アメリカって国は上の方の人がホントに腐ってるんだなぁとつくづく思わされます。

 そして女性キャスターをセックスシンボル的に扱うのは日本だけじゃないのね。いま住んでる英国のBBCなどの女性キャスターは、全然セクシーだったりかわいかったりせず、強そうな感じで、初めてテレビ見た時は驚いたけど、日本やアメリカの方がむしろ遅れてるんだろうな。
 
 ここ20年くらい、作り物みたいな役が多かったニコール・キッドマンが、珍しくちょっと年齢や人間味を滲ませる役どころ。シャーリーズ・セロンはメーク顔が別人みたいで、いつもより老けて見えたけど、調べたら実際の本人とそっくりで、これは役作りのための特殊メークだったと知り納得。マーガレット・ロビーは久々にちょっとかわいい役だった。

 しかし今作の一番の演者はジョン・リスゴー。最低な会長役を完璧に演じきってました。いつもよりかなり太っていたように見え、あの年齢で役作りのために増量したんだったら、すごいと思う(あとで調べたらこれも特殊メークらしいです)。この人ここ数年、昔以上に存在感のある役が増えてる気がします(BBCドラマ「クラウン」でのチャーチルの役はゲイリー・オールドマンよりよほどハマってた)。

 あと、マルコム・マクダウェルも嬉しい驚きだった。さすがに年取ったなぁ。

 C・セロンが事件を風化させないために製作陣にも加わった(つまり製作費出したってこと?)らしく、この人やっぱりすごい。N・キッドマンが最後に巨額の賠償金を受け取るシーンで、和解条件に事件の秘匿も入ってたみたいだけど、どうやって映画化したんだろ。

 ストーリーからキャスティングまで、見応えのある実話系映画でした。すごーい面白いかと聞かれると微妙だけど、観て損はないと思います。
ワイカ

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