ハンコ課長

ブルータル・ジャスティスのハンコ課長のレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
4.1
渋くて良かった!

当初メル・ギブソン主演ときいただけで、「あっ、これは悪いヤツらとドンパチやって、最後はスッキリ爽快エンドね」っと思ってましたが…誠に申し訳ありませんでした。
全然違いました。

実際はまるでジム・トンプソンの小説のような場末のハードボイルド映画。演出は抑え目で、音楽はカーステレオから流れてくるモノだけ。途中、様々な人物たちからの視点を挟んでくるのが良い。

主人公はもうジジイの刑事。地道にしかし着実に仕事をこなしてきたが、給料も安く治安の悪い街で家族の心もすさんでいる。
仕事への情熱はやはり正義感に支えられてきたが、ここへきて揺らいでくる。

そして、悪役が強烈に悪いヤツらだ。チンケなコンビニを叩くときも、容赦はしない。目的の遂行のためには、指を弾くように命も奪う。映画では彼らの描写もとてもシンプルで、論理や視点が一才描かれず同情の余地もない。

また、まさしくその狭間にいるような黒人青年も立ち位置が上手く、この映画の肝になっている。生きるために軽微な犯罪を犯すことは厭わないが、家族のことを気にかけている。

印象的だったのは、黒人の弟も主人公の奥さんも足が悪く、その悪くなった理由が詳細に語られていないことだ。恐らく悪い奴らにやられたのだが、具体的に描写しないことで、仕方ないというか厭世感が滲み出ていた。そして産後鬱に苦しみながら出勤する女性の描写は強烈に焼きついた。

陰鬱な空気に支配される中、張り込み中の買い出しやスマホを破壊するところなど、相棒との軽妙なやり取りが唯一救いで笑える。

クライマックスの襲撃シーンと主人公との銃撃戦は素晴らしい出来で、この監督の次回作にも期待したい!

余談だが、『ドラッグウォー•毒戦』が個人的に最近のお気に入りで、ウンコ映画の後に奇しくもシッコ映画が上位に来てダダ漏れ付いているのは、偶然だろうか。
ハンコ課長

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