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ブルータル・ジャスティスのペインのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
4.5
皆の衆が『テネット』へ駆け込むのを横目に…こちらを。祝!S・クレイグ・ザラー監督作日本初公開。

最高。今年ベスト。70年代の往年のざらついた無骨なバイオレンスアクション映画の雰囲気を漂わせつつも2010年代でなければ作られ得なかった紛れもない“今”の映画でもある。

長編3作目にしてもう巨匠の貫禄といいますか、どっしりと腰が据わった重厚でクラシカルは語り口。

メル・ギブソン自身が本作をサム・ペキンパーやドン・シーゲルの作品に例え評していたのも的確な部分はあるが、サム・ペキンパー作品にあるセンチメンタリズムみたいなものはまるでなく、かといってドン・シーゲル作品のテキパキした職人的な語り口みたいなものとも無縁の、ひどく人間臭くも異様なまでのドライなタッチが印象的。

顔の整ったさわやかイケメンや美女などはまるで出てこないけれど、脇役に至るまで皆それぞれがいちいちハマっており、主役の警官コンビを演じるメル・ギブソンとヴィンス・ヴォーンの息のあった掛け合いや、ユーモア溢れる会話の妙、何気ない日常描写の積み重ねが実に味わい深く、あらゆる部分に旨味成分が凝縮されているいぶし銀のような作品。まるで“テンポよくポンポン進んでいくだけが面白い映画ではない!”というザラー監督からの啓示のよう。なので『トマホーク ガンマンvs食人族』同様、一見冗長とも評されている前半部のシーンも警戒はしたものの全然気にならなかった。

しかし“暴力の伝道師”と評されるザラー監督なだけあり、ふとギョッとするような人体破壊描写(※顔面破壊の時だけ何故かカメラが寄るという変な癖アリw)や、バイオレンスシーンが挟み込まれ、1秒前とはまるで違う世界に連れていかれる感覚をまざまざと味あわされる。

何気ないシーンのカーステレオから流れてくる曲まで、劇中歌すべてを監督自身が作曲したオリジナル曲という才人ぶり。本作は本当に音の使い方や、空間の利用の仕方、人物それぞれの配置の仕方、クライマックスの作り方の構造含めとにかく歪で独特でクセになる人はクセになる強烈な作家性を感じます。


メル・ギブソンは見ないうちにすっかり別人のようになっていたが、これはこれで激シブな魅力を放っていて素晴らしかった。ラストのキレ味も最高!『ブレイキング・バッド』とか好きな方、是非観てアンチョビ~👈👈👈👈👈
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