Yukinobe

ラストナイト・イン・ソーホーのYukinobeのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

エドガー・ライト監督作品だし、トーマシン・マッケンジー出てるし、予告編が魅惑的だし、周りの評判もいいしで観に行ったけど、これが大正解だった!
映像は想像以上に極彩色ネオンが色鮮やかで魅惑的、現実と幻惑が混じり合う鏡を使った演出は見せ方が独創的、かと思えば使い古された入れ替え演出が効果的、展開もテンポ良く、いい具合に張り巡らされた伏線が衝撃度合いを盛り上げる、まーよくできた映画でした。キャストの演技も凄まじく、幻想的な世界に引きこまれる引きこまれる。見終わってからの、凄いものを見た感が凄まじかった。

と、こんな感じでベタ褒めしたんだけど、もちろん気になる点はある。
サンディのラストの改心のポイント。真実を知ったエロイーズを殺害すべくサンディは火事にも目もくれず、何だったらエロイーズの友人を刺してまで追いかける。なんだけど、エロイーズの力なのか、かつて自分が殺害した男たちの幽霊を見て、突然何かに突き動かされ、改心してしまう。ちょっと記憶が曖昧なのだが、明確にサンディが改心するポイントはなかったような気がしている。
ここは、エロイーズがサンディの罪を許すまでに至る経緯も同じで、自分を呪殺そうとしていた?追い込んできていた男性たちの幽霊が、実は助けを求めていたのだと分かった時に、何かがエロイーズの中で起こったはずなのだが、ここもちょっと読み取れない。
おまけに、それまでボヤッとしていた幽霊たちの顔が、サンディが部屋にやってきた瞬間に、全員明確に顔が見えるのだが、その覚え方がなんでこんなの?というくらいテンプレのように怯えているのが笑えてしまう。
という具合に、最後はかなり勢いで押し過ぎた印象があり、折角キレイに畳めそうな風呂敷が少しシワができた感じがした。
これはエロイーズのラストへの心の流れも同じ印象で、この物語を田舎から純粋な気持ちで上京した少女が、都会の喧騒にやられて病んでしまうがやがて乗り越える、という流れをこの形で表現したのだと考えると、都会を乗り越えた瞬間がどこなのかが明確ではなかった、ということになる。
だから、ラストのエロイーズがなぜそんなにも溌剌としているのかがちょっとわからないのだ。蛇足、みたいな感じでテンプレに改心したクラスメイト効果もあって、ここでちょっと首を傾げてしまった。

んだけど、実は見た時は勢いに押され、そこまで気になることなく鑑賞し終えてしまった。これはつまり、この映画自体にそれだけの力があったということで、そう考えるとやっぱ単純にすごかった、ということになる。そんなわけで、この点数!
いやー、いい映画見た!
Yukinobe

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