えくそしす島

ラストナイト・イン・ソーホーのえくそしす島のレビュー・感想・評価

3.8
【見果てぬ夢と、その後】

ひょんな事から60年代のロンドン・ソーホーに居た人と主人公がシンクロして擬似体験するのね、あー、はいはい。
音楽の使い方さっすがー、オッシャレーと、かるーい気持ちで観ていたのだが…。

監督・エドガー・ライト
脚本・エドガー・ライト、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ

あらすじ
ファッションデザイナー目指し学校に通うため田舎からロンドンへ上京したエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)。寮生活に馴染めずアパートで一人暮らしを始めたある夜、1960年代のソーホーで歌手を目指すサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)の夢を見る…。

「エンターテインメントの中心地Soho」

理想的で煌びやかな世界を夢見ていた過去のサンディを介して、追体験するかの様に当時のソーホーを知り、現代と影響し合い、二転三転かつ斜め上へと視聴者を翻弄する。

どことなく「不安定さ」を醸し出す主人公像や数々の狙ったショットは、往年のサスペンスやホラー映画を見知った人であればあるほど、ターミネーター以上に親指が上がる。

夢か現実か糖質か能力か

60年代のソーホーでサンディの「現状が実状」に切り替わる演出は「CLIMAX」の長回しそっくりだ。あの見せ方は臨場感が増す。

サラッと聞き流していたセリフが後に思い返せばゾッとしたりと、フラグ回収も随所にある。一部明かされない点についても「敢えて触れず」に物語の厚みを増している。よくある投げっぱなしの作品とは一味違う。

60年代ソーホーのファッションや音楽、色彩感覚や構図、時代背景を上手く組み込みながら、ファンタジー、サスペンス、サイコスリラー、ホラーへと、違和感なく侵食かつ変貌していく。イイよー!イイねー!

「マリグナント 狂暴な悪夢」同様、名作ホラーやサスペンスのオマージュを込め、更には60年代を匂わせる往年の名優達をも起用。とは言え知らなくても何ら問題ない。

グロさは無く、怖さも控えめ、ジャンプスケアもやんわり。それらが苦手な人でも先が読めない構成の妙で存分に「物語」や「映像と音楽」を楽しめるはずだ。

偶然か必然か
ジェームズ・ワンのマリグナントと同時期に、エドガー・ライトも独自色全開の新しい「エンタメホラー」を提示してみせた。

まるでクリストファー・ノーランの「ダンケルク」に対抗したサム・メンデスの「1917 命をかけた伝令 」のようだ。

まさに

“自分ならこう作る“