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ラストナイト・イン・ソーホーのdeenityのレビュー・感想・評価

3.3
エドガー・ライト監督のホラー映画ということ、作品の雰囲気が劇場向きなこと、そして何よりアニャ・テイラー=ジョイとトーマシン・マッケンジーがW主演ということでめちゃくちゃ劇場に行きたかった作品。これが見に行けなかったのはかなり悔しかったなあ。ということで、配信にて鑑賞です。

60年代に憧れるエロイーズはファッションの勉強のためにロンドンへ。彼女は元々見えないはずのものが見えてしまったりする体質なのですが、ロンドンへ移ってから60年代を生きた美女・サンディの姿を夢の中で擬似体験するようになる。

このサンディがアニャなのですが、まあとにかく美しいんですよね。もうそれだけで眼福もの。
歩き方。ダンスシーン。何なら指の動き一つとってもとにかく美しくて、ありゃ60年代に惹かれてなくても魅了されるわな、って感じです。
もちろんトーマシン・マッケンジーもきれいなんですけど、その2人が鏡を通して重なった動きを見せるシーン。撮影のこととか考えるとまあ見事なシーンですし、画だけで引っ張っていく力がありましたね。

全体的な雰囲気として、パケ写通りのネオンが織りなす極彩色のライティングは美しいですし、とにかく見ててお洒落な雰囲気が最高でした。
これで内容も、となれば良かったのですが、内容自体は至って平凡なレベルに感じました。

まずそもそもホラー映画という文句だったわけですが、実際のところはサンディが殺されたシーンを目撃した辺りから一気にホラーテイストに変化していきますが、前半部分はミステリー要素が強く、ジャンル横断的な作品であると言えると思います。

別にそれ自体は悪くなく、ミステリーホラー映画的ジャンルも面白かったのですが、肝心のホラー演出が全くと言っていいほど怖くない。
のっぺらぼうの幽霊によるほぼワンパターンなジャンプスケアばかりでは正直物足りなく、男性に見られることへの嫌な空気感ってだけでは満足できなかったんですよね。

また、ラストに行くにつれて、あれが本当に幽霊なのか、それとも幻覚なのか、曖昧にしたのもはっきりしなくて逆にノイズだったかなって思っちゃったり。
だからクライマックス辺りでは完全に冷めた目で見てる自分もいて、「いや、薬盛られたわりには動けてんな」とか「この彼は結局完全なる善人キャラなんかい」とか余計なことばかり考えてる自分がいて。

そもそも彼のことだって全然背景部分を描かないから逆に疑って見てしまうし、主人公含め各キャラクターの背景が薄過ぎて中途半端にはなってましたよね。
だから本作のラストなんかは結果的に彼女の成長譚みたいな様相を呈していますが、そのわりには成長過程が曖昧かなって思います。

前半部分がかなり良かっただけに、後半の伸び悩み感は否めませんが、その前半での映像だけでも見る価値はある気がしますし、とにかく主演の2人が好きなら見てくださいって感じの眼福映画でした。
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