Jun潤

モービウスのJun潤のレビュー・感想・評価

モービウス(2022年製作の映画)
3.6
2022.04.01

彼はヒーローか、ヴィランか。
『ヴェノム』から始まる「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)」の第3弾。
すっかり愛らしい人間×人外のヒーローコンビとなったエディとヴェノム。
果たして今回誕生するモービウスは、その流れを汲むのか、予告のダークな雰囲気のまま、スーパーヴィランのごとき姿を見せてくれるのか。
MCU作品群と絡みそうで絡まないユニバースの最新作がついに公開です。

25年前、血の病に侵されているという共通点を持つマイケル・モービウスとマイロが出会った。
治療法のない病に対し、その知能を見出されたマイケルは自身とマイロを救うため、大学へと進む。
現代、ノーベル賞を獲るまでになったマイケルだったが、治療法は未だ見つかっていなかった。
藁にも縋る思いで、“死の山”に生息する吸血コウモリを捕獲し、人間のDNAと組み合わせる実験を開始する。
マウス実験は成功、裏の世界でのしあがったマイロの資金提供を受け、ついに自分の体にコウモリのDNAを注入する。
しかし、病気は治らないどころか血を摂取しなければ体は飢餓に陥り、それと引き換えに並外れた膂力と反響定位の力を得る。
マイロが雇った傭兵を殺してしまった罪の意識から、人血への欲望を抑えながら元の体に戻る方法を探求するマイケル。
しかしマイロは、人間ではない怪物になってでも生き永らえる選択をし、秘密裏にマイケルの作った血清を摂取する。
怪物となった意義の違いから反発する2人。
果たしてマイケルは吸血鬼として怪物となるのか、ヒーローとなるのかー。

まず作品単体として観ると、マイケル・モーピウスという1人の男が、自分と大切な人の病を治すために奮闘し、互いに怪物となってなお人間として治そうとする様が描かれていました。
マイケル単体だと、ノーベル賞授賞式の場で皮肉を吐いたり対人関係が苦手な印象が強く、ただ人のためというよりは自分の大切な人のためだけに動くエゴイスティックさが浮き彫りになっていました。
それだとヒーローとヴィランどちらとしても描かれそうなところを、恋人のマルティーヌとの関わりからキャラが確立されていたなという印象です。

アメコミ実写作品として観ると、力の出自や敵との共通点の描写、自身の力の全貌を知るシーンが、丁寧かつ簡潔に描かれていた印象です。
しかしマイケルの反響定位の範囲や能力の発動条件、マイロが同じ能力を有していたかの描写が薄く、パワーの解釈が足りていない気がしました。

モービウスという存在の描写についても、他の映像化済のヒーローやヴィランとの差別化を図ってかエフェクト付きで摩天楼を駆け巡ったり、反響定位の演出が凝っていたりしていたのがとても良かったです。
完全に変貌した後の顔はとても怖かったですが、一部のみ本当の顔が顕現してしまうのは中二心を刺激してきましたね。

そしてユニバース作品群として観ると、NWHを経てSSUの可能性が一回り以上広がり、ユニバースの次回作やシリーズの次回作への期待が盛り上がる場面もありましたね。
そのユニバースの仕組みや全容を知るには現在公開されている作品のみでは考察が進まないので、今後の展開から目が離せません。

しかし今作のストーリーにユニバースの繋がりを加味すると、モービウスがヒーローなのかヴィランなのかを判断するには今作自体のキャラ描写の一貫性が足りていなかった印象。
ヒーローとヴィランどっちに転んでも大丈夫な覚悟はしていたので、今作だけでその解答を得たかったところ、オリジンにもなっていなかったかなぁ…。

吸血鬼×美女の、愛する人の血液を飲んでしまうという悲哀と純愛に満ちた場面は大好物です!!
Jun潤

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