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ナイル殺人事件のシネラーのレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)
3.0
『オリエント急行殺人事件』(2017)に続き、
同じくケネス・ブラナーで映画化された
本作を初鑑賞。
全体的には本作も楽しめる
古典ミステリーではあるのだが、
好きか嫌いかで言われると普通な印象。

ナイル川の豪華クルーズ船を舞台に、
そこで起きた殺人事件に名探偵ポアロが
挑んでいく内容となっており、
人の歪んだ愛情が全編通して描かれる
古典ミステリーだった。
前作で仄めかされていたポアロが愛した
カトリーヌとの過去が語られ、
事件自体も愛憎劇から巻き起こる
内容なだけに一貫したテーマが
描かれていると思った。
エジプトらしい情景や結婚式に
クルーズ船といった舞台も、
CGっぽい部分を除けば豪華絢爛で良かった。

しかしながら、
前作から薄々感じられていたが、
ケネス・ブラナーの演じるポアロは
どうも英国紳士な印象よりも
自己中心的で人を逆撫でする
自惚れ屋な印象が勝って、
いまいち好きじゃないと思った。
その上で事件が連続殺人に発展するが、
ポアロがみすみす事件を誘発させている
ような印象も強かった。
加えて、時代背景的にも合わない
同性愛の人物描写は不要に思えた。
その点で言えば、
原作では白人だった人物が
黒人に改変もされていたのだが、
そちらは人物のキャラもあって
気になる部分ではなかった。
そして、個人的に本作の犯人の結末は
前作と並んで好きじゃない展開であり、
その大詰めとなる推理ショーも
駆け足気味で何故その人物なのか
といった推理の過程が省かれていると思った。

前作同様に古典ミステリーを
楽しむ事ができる点は満足しているが、
それでも説明からくる会話劇の多さや
謎解きの道筋が前作よりも少なく思えた。
演じる役者によってキャラクターが
本来よりも変わって見える事はあるが、
内容そのものはクリスティの
原作に準えている分、
ケネス・ブラナーのポアロに
違和感を感じさせる2作目だった。
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