シネラー

アバウト・タイム 愛おしい時間についてのシネラーのレビュー・感想・評価

5.0
以前から観たいと思っていた作品だが、
リバイバル上映を機に初鑑賞。
タイムリープを利用した
ラブコメが続いていくかと思えば、
次第に家族を紡いでいく
家族愛に溢れた作品で素晴らしかった。

物語は21歳を迎えた青年ティムが
タイムトラベルできる一族の能力を
父親から伝えられ、
能力を駆使して彼女をつくろうとした
後にメアリーという女性と巡り逢い、
彼女と関係を築いていく中で
日々の幸せを実感していく
SF・ラブストーリーとなっている。
物語前半にかけては
ナードなティムが能力を使って
メアリーを恋人にしようとする
ラブコメが主となるが、
恋愛慣れしていないティムの
紆余曲折がコミカルで面白かった。
ティムの初体験における
三段落ちと言える描き方に、
デリカシーの無い会話からの
タイムトラベルによる仕切り直しは
良いコメディだった。
何よりもメアリーを演じる
レイチェル・マクアダムスが可愛く、
土砂降りの結婚式を終えての
彼女の返答が好きな場面だ。

中盤以降からは見事に
ティムとメアリーが結ばれた事で
家庭を築いていくのだが、
そこで家族に巻き起こる不幸や
やり直しが不可能な事態に直面し、
家族における子どもの存在が
ティム自身や彼の父親にとって
大きな意味を持たせるのが上手いと思った。
ビル・ナイの演じる父親と
ティムの場面が多くなっていくが、
茶目っ気ある親子の会話が良く、
恒例だった二人の卓球からの
最後の親子時間がとても尊く感じられた。
結末にかけての約10分間は
涙が零れる位に素晴らしく、
一日の生活で得られる
やり直せない日々の良さや
家族愛に溢れていて良かった。
日常の楽しい事も辛い事も
全てが大切な時間という
シンプルな人生の回答ではあるが、
「あの時にこうしてれば…」という
後悔も含めて今の自分なのだと思った。

気になる点を言えば、
ティムにとってあまりリスクが無い
タイムリープは都合が良過ぎる上に、
終盤にかけてのタイムリープした先での
更なるタイムリープによって
何が現行の時間軸なのかも引っ掛かり、
SFにありがちなタイムパラドックスは
本作でも感じられてしまった。
おそらく、場面が切り替わったところで
時間が進んだ場面が幾つもあると思った。

劇場鑑賞した直後には施設内の
DVDショップで円盤を購入した位に
感動した映画だったが、
家族を築いて父親となった時に
再鑑賞したい映画の一つだ。
歳を重ねて鑑賞した際には、
ティムの父親の視点から
感情移入できる位に生きていけたらと思う。
初鑑賞が劇場だった事に感謝。
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