社会のダストダス

アーミー・オブ・ザ・デッドの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

4.4
「イージー・プリージー・ジャパニージー(簡単なことだ)」
簡単なお仕事をみっちり2時間半かけて描くザック・スナイダー節。
この台詞が出たとき、中国人をネタにしたジョークを入れて中国で公開中止になってしまった最近の某狩猟映画を思い出したけど、真田広之に世界同時配信のNetflixで言わせたあたり、言いたいことも言えないそんな世の中はポイズンになりつつあるハリウッドに対する風刺が効いている。そんな意図はないかもしれないけど。

ザック・スナイダー作品では「300」と「ウォッチメン」が好き、「ドーン・オブ・ザ・デッド」はまだ観たことないのでそのうち観たい。特に「300」が好きなんです、あの真剣なのに超バカな感じが。久々にDCコミックス以外のザック・スナイダー作品ということで、今年一番新作でワクワクしながら観たかもしれない。
Netflixはいい投資先に大金を突っ込んだものだ。

速い!強い!賢い!と三拍子そろったゾンビ軍団。全能の王たるカリスマゾンビがまとめ上げ隔離されたベガスを支配する。女神像から主人公一行を見下ろすアイツの姿とか、完全に「300」のゴージャスハゲがフラッシュバックするし、途中出てくるトラゾンビ、馬ゾンビ、パルクールゾンビとかシリアスな作風に外連味をぶち込んでくるのは相変わらず。

世界観が大好物、スローモーション好き、細かいんだか大雑把なのかな展開、そして長い、と何かと自分と相性がいいザック・スナイダー作品。今回も全部乗せで楽しかった。
ウォッチメンのオープニングを彷彿とさせる“Viva Las Vegas”だけで映画一本分の情報入ってるくらいだし、もうあんな至高のオープニングを見せられたら、そのあとは正座して観るしかないでしょうと。

WWEの時はそれほど好きでもなかったバティスタ。まさかこんなに眼鏡が似合うゴリラに進化していたとは。相変わらず銃なんか捨ててパワーボムしたほうが強そうなガタイの良さ。もう50過ぎだったのか、ロック様より後の世代だけど彼より年上だったとは、本作では見事な主役っぷりだった。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のちょっぴりおバカなゴリラや「007 スペクター」の無口なゴリラくらいしか観たことなかったので、過去の清算、娘との関係修復に苦悩する哀しきゴリラである彼は比較的アッパーなノリの本作においてストーリーの支柱になっている。

エラ・パーネル演じる娘は、ちっともパパの言うこと聞かずに、あっちフラフラこっちフラフラしちゃうけど、それに振り回されながらも助けに行くバティスタの構図は、最後のシーンを含めて考えると、ザック・スナイダー自身を投影しているように思えてならない。娘ちゃんは終盤まであまり銃を撃つシーン無かったけど、撃ち始めたら百発百中でビビる。

ゾンビ社会が大体「300」と一緒だった(笑)。雄たけびだけで成立するコミュニケーション。もはやゾンビの群れというよりはどこぞの部族。キングとクイーンの格好は一体どこで調達してきたのか、トラやはともかく馬ゾンビも肉を食べたくなるのだろうか、パルクールするゾンビは死んでから技を習得したのだろうか。
いろいろ気になり過ぎるけど、流石のビジュアルインパクトで観入ってしまう。この壮観ぶりは是非とも劇場で観たかった。