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主戦場のeulogist2001のレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
4.3
この映画は人文学の入門として、すべての学生に観せたら良いなと思う。

とりわけ社会学、歴史、宗教、政治、教育、思想について学ぼうとしているなら必見だろう。また差別や偏見、戦争や平和を考えるひとにも有益に違いない。

人文科学は自然科学とは異なり再現性を担保には出来ないが、事実や公平性、普遍性を求めるという点では確実に社会にとっては持続的に有益な知見・知識だと思う。

この映画では左派(人権擁護派)、右派(歴史修正主義)などの二項対立構造はさておき、より確からしい事実は何か?その事実から論理的に導かれるものはなにか?論拠の背景にある状況は何か?

歴史的な背景、党派的なパワーゲームの中での言説の変遷も追いながら、それでも反証が難しい芯を描く。その手つきを辿る事で学ぶ点は非常に大きいだろう。

ところで日本の論客は(いや日本に限った事ではないけれど)右派や左派に依らず、先に自分たちの主義・主張があり、そのためには玉石混交な例証でもすべて鵜呑みにするか、反例は完全無視に終始し、ほとんど感情論になってしまうのは残念だ。もちろんビジネスとしてやってるひとは論外。

ネット民と同様に徒党を組んだ集団は階段を上り続けてしまう。それが登るに値するものかどうかの不断の検証なしに・・・。それこそがいちばん怖い事なのに。(その意味では「転向」は歓迎すべきだろう)

政治について言えば、左派は人権や差別に過剰反応し、右派は美しさやロマン、伝統など観念論に収まる。

これらの状況を打開する新しい発想や思想、物事の捉え方が必要なのは明らかだが、なかなか解は出てこない。世界の課題は少しずつ改善されてきているのは言を待たないが、ブレークスルーを起こす価値は見いだせていない。むしろ世界は反動的な感情に支配されそうになっているのが2020年の状況だろう。

果たして、それはつまるところ人間がコントロールするからだというのなら、AIが判断するほうが良いのかもしれない。(AIの問題点も多々あるのを承知の上でです)少なくとも人間より上位の価値が出現したら、争うよりは協力、くだらない対立は解消される方向になりはしないか。完璧ではないにしても人間よりはマシではないか。人間至上主義こそ捨て去るべきではないか。というお正月のおとそ混じりの人間以下の夢想。
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