山本Q

ミッドサマーの山本Qのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

A24。へレディタリーの衝撃からそれほど間をおかずにアリアスター監督の新作登場。チラチラと漏れてくるビジュアルもこれまた予想もつかない不穏な空気を放っていて期待を煽ってくる。あんまり待ちすぎちゃうとハードルが上がりすぎてしまうという事で鑑賞。


何が凄いと言ってもこの内容でこの集客は驚き。自分の感覚だとイメージフォーラムあたりで好き者が10人いないくらいの題材だと思う。それがまあ特に有名な役者もいないのにそれなりの入り。日本の未来は明るいに違いない。

映画はもちろん面白かった。
特に凄いと思ったのは、ほぼ全編をちゃんと民俗学的な題材で押し切った事。これは凄い。オカルトに逃げず超自然現象も出さない。せいぜいが幻覚剤くらい。これは極めて現実的なモノ。
とここまで考えて、実はコレはホラー映画ではないと勘ぐり始める。主題は作中人物の恐怖では無んじゃなかろうか。

感触として監督は何を撮ろうとしているのかハッキリとしたビジョンを持っているように見えるが、こっちはそれが何なのか見当がつかない。一体アリアスター監督は何を撮ろうとしていたのか。

そして、どっかの誰か(と言うかアリアスター)が考えた実際には無い、閉鎖された空間の土着宗教的儀式を2時間近く見続けるというのもなかなかのよそでは味わえない体験で楽しい。

と言う所で、作中人物の立場と観客の立場に(知りうる情報の違いによって)若干の齟齬がある。主人公の女性は恐怖というよりは動揺や困惑というような心理状態が目立った感情で、恋人役の男性が恐怖を感じるのはかなり後半も後半になってからだと思う。彼は基本的には、彼女がウザい卒論のテーマが見つからないいいネタ見つけたラッキー、という状態が大部分をしめている。
なので、登場人物が怖がらない。登場人物の恐怖を共有して怖がるタイプの映画では無い。だから実はホラーでないかも。

基本的には訳の分からない事による“不安”を感じ続ける映画で監督の狙いもその辺だったのでは無いだろうか。
今作のように不安を感じ続けるのがホラーか否かは微妙だが、お化けが出て来て怖いと言う類のものでは無いのは確か。ホラーか否かを無理に決める必要は無い。が、へレディタリーを踏まえるとホラーをベースにしていると考えていいと思うし、その場合は監督が誰も見たことがないホラーのその先を目指した作品なのでは無いだろうか。
作中人物の感情を共感しずらい事を意図しているのにホラーというのは新しい気がする。

けど、ジャンル云々は気にしなくて楽しい映画でした。怖がるか笑うかはご自由にと言う事なんだと思う。そういうホラーなのかコメディなのかみたいな事を色々と検討したくなるようなところが魅力で面白い所。
山本Q

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