自宅で友人1人と。
2020年のアメリカの作品。
監督は「ヘレディタリー 継承」のアリ・アスター。
あらすじ
家族を不慮の事故で失った大学生のダニー(フローレンス・ピュー「ストーリー・オブ・マイ・ライフ 私の若草物語」)は大学で民俗学を研究する恋人クリスチャン(ジャック・レイナー「KIN/キン」)やその友人5人とスウェーデンの奥地で開催される90年に一度の夏至祭に参加することになるが、それは想像を絶する悪夢の始まりだった。
監督の前作「ヘレディタリー」は劇場で観たんだけど、途中でギブアップしたくなるくらい個人的にはショッキングな作品だった。
ただ裏を返せば、それだけ期待したくなる監督なわけで続いて公開された今作は前作の評判に輪をかけて注目されただけに劇場で観たかった作品なんだけど、やはり前作のあの事故のシーンを思い出してまたトラウマ見たくないなぁと思って、結局ヒヨって観に行かなかった。
ということで、今回満を辞してレンタルで鑑賞。
まず、前作と比べると格段に観てられる作品。物語の舞台となるスウェーデンの夏至祭が白夜ということもあり、ほとんど真昼間で進行していくので確かに前作に続いてショッキングなシーンがあるんですが、まぁ直視できる。また、Jホラーでもお馴染みの急にわぁっ!って感じで驚かす苔脅しもそんなにないので心臓にも安心です笑。
個人的にはもうこの時点で好き笑
で、お話はというと言ってしまえばモンド映画にカテゴライズされる作品。まだ観たことないけど、その走りといえば「ウィッカーマン」、他にも近年では「ホット・ファズ」や「グリーン・インフェルノ」なんかもそんな感じのお話と言えるんだけど、旅行に来た若者が向かい入れられた村で次々に犠牲になるみたいなやつ。
ただ、それをアリ・アスターが手掛けるというわけで、まぁやばいもやばい。はじめは北欧らしく牧歌的な雰囲気なんだけど、序盤の崖でのアッテストゥパンの儀式シーンで決定的にやばいシーンがやってくる。
もう椅子に乗せられて運ばれる段階からやばいなやばいなと思っていると、そこに崖が現れて、もしかしてもしかして〜となって、そこからあれよあれよと言う間にひゅーん、ドスン!!
実際に飛び降りは見たことないけど、人って崖から飛び降りるとあんだけ顔グシャグシャになるんだな。しかも、飛び降りに失敗した旦那の方は見守る代表がハンマーでオーバーキルのおまけつき。
その儀式とそれを当たり前だと受け入れる村人たちに部外者であるダニーたちはそれぞれの反応を示す。
逃げ出そうとする者、途方に暮れる者、受け入れて調べ出す者。
逃げ出したり、途方に暮れるのはわかるんだけど、大学の論文のために熱を入れて調べ出すジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)に乗っかって自分もこの夏至祭のこと論文に書くクリスチャン…浅はかだなー。
それぞれがそれぞれの思惑の中で行動する中、1人また1人と村人の魔の手にかかるダニーたち。
個人的には村人たちにとって大事な神木的なものにあろうことが小便を引っ掛けたマーク(ウィル・ポールター「メイズ・ランナー 最後の迷宮」)の最期が一瞬「え?」ってなって印象深い。遠見だと分からないけど、よく近づくと…うわっ!ってなったわ(「愚か者の皮剥ぎ遊び」…恐っ!)。
あとは終盤いなくなった仲間たちが死体となって次々と発見されるんだけど、別グループのサイモン(アーチー・マデクゥイ)の最期、これテレビドラマ版「ハンニバル」でもこんな死に方あったよなと思って調べると、どうやら「血の鷲」という北欧神話に準えた歴史的な処刑方法らしい…って恐っ!
あと、やっぱ特に衝撃的だったのはクリスチャンだよなぁ。序盤から村の女の子に目をつけられてたけど、経血入りジュースと陰毛ランチを食べさせられた後、迷い込んだ先でのドッキング…。相手の女の子がまさに北欧美女的な子だから、まぁワンチャンアリかなぁなんて思うけど、周りに「アー!アー!」言ってるマダムたちがよがってたら集中できねぇよ笑!ここのシーンはモザイクアリアリのまさにカオスな名シーンと言えるけど、絵的にばかばかし過ぎて笑ってしまった。
ただ良かったのはここまでで後は地獄。熊の生皮に縫い付けられて生きたまま焼かれるって儀式とは言え一体全体どんな思考回路ならそんな方法思いつくのか…。ただクリスチャンは最後にいい思いできたから百歩譲っていいとは言え(良くないか笑)、後の立候補者の2人は人身御供とは言え、なんかよくわかんない格好させられた奴らと共にお座なりに焼かれるって…嫌だなぁ!!
そんな感じで、冒頭の絵巻やシーンの途中途中で暗示される印象的な絵によって、絶望的な最期が訪れるであろうことは分かっていたけど、「ヤダみ」がとにかく凄かった。
ただ、そんな中、クリスチャンが燃やされる家を見つめるダニーの恍惚的な笑顔には、個人的には少し爽快感すらあったように俺には感じられた。今作、グロテスクな内容にばかり目が行きがちだけど、俯瞰的に観ると「あるカップルの別れ」に焦点を絞っているとも言え、そういう意味では、病み彼女に愛想が尽きていたとは言え、その偽善的な優しさでダラダラと付き合っていたクリスチャンの呪縛からようやくダニーが「解き放たれた」ともとれるわけでそういう意味では大きく観れば「ハッピー・エンド」なのかもしれない(まぁ結果的にはダニーも村に取り込まれているわけでバッド・エンドなのだが)。
多分、この最後のダニーの笑顔という「救い」がなければ、陰鬱な映画で終わっていたと思うし、そう考えるとアリ・アスター監督がただキモい映像だけを撮っているのではなく、ちゃんとエンターテインメントに作品を寄せていっている、人間的な部分も垣間見えて、ちょっとほっとしてしまった自分がいた。
何にせよ、監督の次回作も恐れ慄きながらも期待して待ちたい。