ブタブタ

ミッション:8ミニッツのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

ミッション:8ミニッツ(2011年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

「包囲された城」
と聞くと毎度毎度しつこいですがカフカの『城』が浮かびます。
あの「8分間だけの世界」はまさに何度行っても決してその先の目的地には辿り着く事はないカフカの「城」でしょうか。

何処かの基地で進行中の謎の作戦及び実験。
カプセル?墜落したヘリ?の中から爆発が迫る列車内へ何度も何度も脳内ダイブ→死を繰り返す一人時間遡行軍のスティーブンス(ジェイク・ギレンホール)

『インセプション』『あやつり糸の世界』に連なる多層世界モノですが同じ時間が何度も繰り返し決してその先には行けない「ゼノンのパラドックス」的な世界―「飛んでいる矢は止まっている」様にあの8分間はそこだけ切り取られ永遠にループし続ける進みつつ静止した時空間で、既に起きてしまった事故を阻止しに行くと言う不可能ミッション。

この劇中登場する時間遡行並行世界移動マシン??ソースコードとは単にコンピュータの中に作られた仮想現実空間ではなく解説によると8分間だけ並行世界にアクセスできるゲートで「並行世界に存在している特定の人物の意識へシンクロできるデバイス」との事で、スティーブンスが列車に何度も行き来し別の「可能性」を示す事で世界がどんどん分岐して行くのですよね。

そう思うとグッドウィン大尉(ヴィラ・ファーミガ)は実はスティーブンスが最後に送ったメールを実は予め最初に別の並行世界のスティーブンから受け取っていて又ラストに登場したスティーブンと共に別の「包囲された城」作戦が始まると言う円環構造になっているのかも、と思います。

仮想空間、並行世界、パラドックス、拡張現実、事象改変と大好きなモノてんこ盛りで超面白かったし何度も見たい作品です!

ただ一つの不満は題名及びポスタービジュアルがちょっとダサいと思うんですが...
普通のサスペンス映画だと思っていてずっと見る気がしなかったんです。

ダンカン・ジョーンズ監督は哲学も専攻していたとの事で長編第1作『月に囚われた男』は70~80年代SFの雰囲気が色濃い世界や深いテーマ。
そして父デビッド・ボウイ主演の『地球に落ちて来た男』のニコラス・ローグ監督作品の様な感じの印象も受けるんですよね。
科学と幻視の融合した様なイメージと言いますか。
なのでタイトルはやたらお洒落系の意味わかんない感じにすれば良いとは思わないのですが、この作品はコードの『包囲された城』とか普通のサスペンスではないとちゃんと解るタイトルにした方が良かったと思います。

ダンカン・ジョーンズ監督がデビッド・ボウイの息子「ゾウイ」の愛称で知られたあの子だったとは全然知りませんでした。

先日『デビッド・ボウイ展』行ったんですがボウイは自身の曲『ダイヤモンドの犬』を元にした映画の制作を企画していて、その絵コンテも展示されていたのですがボウイの才能は息子であるダンカン・ジョーンズに見事に受け継がれた様で極めて希な例だと思います。

次回作の『ミュート(原題)』は『月に囚われた男』と世界観が同一?の作品らしく之も楽しみです。
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