一人旅

ペイン・アンド・グローリーの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ペドロ・アルモドバル監督作。

スペイン映画界を牽引する鬼才:ペドロ・アルモドバルの新作で、監督の盟友でもあるアントニオ・バンデラスが老境の映画監督を妙演、カンヌ映画祭で男優賞に輝いています。

脊椎に痛みを抱え半ば引退状態となっている世界的な映画監督:サルバドールが、32年前に自身が監督した『風味』という映画の再上映依頼が舞い込んだことをきっかけに、その映画で主演を務め現在は絶縁状態となっているアルベルトを訪問するが―というドラマ映画で、名優:アントニオ・バンデラスが監督自身を投影した主人公を演じる自伝的内容の物語が語られていきます。

確執を抱えたまま30年以上経過してしまった嘗ての主演俳優との再会と和解や、貧しかった幼少期に洞窟の家で過ごした亡き母親(ペネロペ・クルス)との想い出、画家志望の青年との触れ合いと性の目覚め、共に暮らし愛し合った同性パートナーとの束の間の再会と別れ…と主人公の忘れがたい記憶の回想と現在の出来事を交錯させていきながら、心身の不調により映画を諦めかけていた主人公に自然と訪れてゆく生きる気力と創作意欲の回復の過程を丁寧に映し出した“再生ドラマ”の秀作となっています。

同性愛を一部含ませた作劇やインテリア&ファッションのビビッドな色彩美はまさしくアルモドバルの真骨頂であり、主人公の人生と彼の創る物語が一つに溶け合う達観のラストショットは格別の美しさ。本映画は80年代初頭から第一線を走り続けてきたペドロ・アルモドバル監督自身の人生&キャリアの集大成であります。
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