松井の天井直撃ホームラン

ペイン・アンド・グローリーの松井の天井直撃ホームランのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

☆☆☆★★★

『ニュー・シネマ・パラダイス』発

『オール・ザット・ジャズ』経由

『8 1/2』行き

…と、思わせての『オール・ザット・ジャズ』へと戻り…。

…やっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』が終着駅(笑)


観客2名 簡単に。

フェリーニの『8 1/2』は、その後の映画史に画期的な変化をもたらしたのだと思う。
それまで、映画中映画は存在してはいたが。そこに芸術家の苦悩を織り込むなど、誰も考えない事だった。
(当時の状況を完全に把握している訳ではないので、おそらく…って事で💦)
ところが、『8 1/2』の更に凄いところは。肝心の映画の中身を一言で表現するならば…。


「浮気してごめんなさい!」 m(._.)m


コレ…当時の状況を考えたなら、ほとんどの人が呆気に取られたんじゃなかろうか(@ ̄ρ ̄@)ホエ〜

本作品、何だかウルトラQばりなオープニングから。主人公である映画監督役のアントニオ・バンデラス(老けたな〜!ちょっとショック)が、水中リハビリ?をしながら、過去を回想する場面から始まる。
この回想場面には、過去の自分と一緒に。母親役のペネロペ・クルスが必ず登場し、ノスタルジーな回顧映像となっている。
それより何より、バンデラスの名前は《サルバドール》なのだ。『ニューシネマパラダイス』の主人公が《サルヴァトーレ》なだけに…(笑)

更に言えばバンデラスは、背中の痛みを始めとして身体の異変には薬物に依存し、その痛みを抑える毎日を過ごしている。
この日々の繰り返しは。『8 1/2』を下書きとして、ボブ・フォッシーが自らの命を投げ出し完成させた『オール・ザット・ジャズ』のロイ・シャイダーの姿を投影しているかの様に見える。
映画本編のほぼ半分以上は、この『オール・ザット・ジャズ』を参考にアルモドバルは演出していたのでは?と、私には見えたのですが…果たして。

ところで、『8 1/2』はフェリーニが妻であるジュリエッタ・マシーナに対しての謝罪を映画を通して描いていたのですが。アルモドバル版では、誰に対して謝罪をしていたのか?
本編の始めの内は、過去の作品で仲違いをした主演男優に対しての様に見える。
実際問題、2人の間にあるわだかまりは。映画祭での上映(ここはかなりクスクスと笑える場面)後に、本音をぶつけ合った事から新たな作品も生まれる。
その作品で題材になるのが、バンデラスが本当に謝罪したかった人物。その人物が唐突気味に登場するのが、映画本編のほぼ半分辺り。
しかもその名前がフェデリコだったのには、思わず椅子から転げ落ちそうになりましたけどね〜( ´Д`)

そのフェデリコが語る言葉に、「君の作品は常に祝祭だった」
(メモを取っている訳ではないので、完全ではなく。大体こんな感じの字幕だった)
思えば、『8 1/2』でのラストに、フェリーニ本人の分身と言えるマルチェロ・マストロヤンニが叫ぶ台詞が「人生は祭りだ!」だったと思う。

このフェデリコ。作品中で唐突に現れては、また唐突に去って行くので、更に呆気に取られるのですが。
1番始めに記した様に、(こちらが最初に記した3作品を勝手に思い浮かべてしまっている事ではありますが)
この男が、アルモドバルに於けるジュリエッタ・マシーナにあたるのかと思うと…実に複雑な想いを抱くモノですなあ〜!
そんな唐突に現れる人物がもう1人居て、子供時代のバンデラス=サルバドールが出会うエドゥアルド。

彼は(確か)3〜4回本編で登場するだけなのですが。彼が何気なくしていた事が、その後のサルバドール=アルモドバルに多大な影響を与えていたとしたのならば…
何とも言い難い不思議な感情が湧いて来るモノですなあ〜(u_u)
……………と、言いつつ。はて?俺は一体全体、何を見せられているのだろう…とも。
今や巨匠扱いされるアルモドバルですが。この場面などは、初期の『アタメ』の頃の《変態性》が垣間見れ、ちょっとばかり懐かしさを感じたりもしましたが。
アルモドバルが自身の人生を振り返っているかの様に見える本作品ですが…その画面を見つめる俺は一体何なのだろう?…とも同時に(・・?)

ただ、アルモドバルは以前にも。『抱擁のかなた』で映画中映画を撮っていて。ヒッチコックの『汚名』を意識している(こちらが勝手にそう思っているのですが)様な秀作があり。今回はアルモドバル自身が、自身の人生を振り返るが如くに映画中映画な作品を作り…と。人生の老朽に入りつつあるのだなあ〜と、思って観ていたところ、映画は『8 1/2』のフィナーレを、花火へと照らし合わせた様な、映画の魔術を示すエンディングへ。

そこに映っていた〝モノ〟それは?





実にあっけらかんとしたハッピーエンドだった事に、思わず草生える思いっス(@ ̄ρ ̄@)



2020年6月24日 TOHOシネマズ流山おおたかの森/スクリーン5