旅するランナー

ペイン・アンド・グローリーの旅するランナーのレビュー・感想・評価

4.0
【苦痛と偏見】

長年映画を作っていないベテラン監督。
あちこち体が痛くて、何もやる気が起こらない。
薬の力を借りて、夢見心地になり、色々なことを思い出す。
母親からの愛、幼い自分の性の目覚め、昔の恋人との接吻、主演男優との確執。
今から思えば、すべて笑い話みたいじゃないか。
過去と融和し、心の痛みは薄らいでいく。

ちょい悪ラテン野郎を大雑把に演じることしかできないと勝手に偏見を持っていた、アントニオ・バンデラス。
この複雑な感情を抱く男を、静かに繊細に演じ、お見事です。
おみそれしました。

アルモドバル監督らしい、色使いとユーモアも、もちろん楽しめます。
映画ファンなら誰でも満点を出すラストシーンも含めて、映画館の座席の痛みは全く感じませんでした。