Lilly

82年生まれ、キム・ジヨンのLillyのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.3

女性たちが感じる悩みや不安、違和感。
生き辛さの原因になるものを、巧みに具現化した展開だった。 
観ながら、過去に自分も似たような状況に陥り、同様の憤りを感じた記憶を、ふつふつと蘇らせる仕掛けになってる。

韓国の話だが、日本にも共通する点は多い。
その繊細な心の揺れをあぶり出し、説得力があった。

生物的機能は、産む性である女性と男性とでは明らかに違う。
出産は女性のみだが、育児は両親共同作業。今の社会は、仕組みが追い付かず。育児休暇は男性はまだ取り辛く、出産育児休暇明けに出勤する女性達は、ブランク明けの家庭と仕事の両立に、苦労し疲弊する。

女性であるがゆえに、差別される社会の古い慣習も、未だに残ってる。(残念ながら痴漢、盗撮、レイプ、ストーカー、誘拐監禁被害は、圧倒的女性側が多い現状)
同じ責務遂行能力、ビジネススキルがあったとしても、出産育児があるからと女性は昇進遅く、年収低め。医学部は受験で不平等な扱いがあったり。確かに産前産後ブランクは出るのだけど、種族保存の為にやむを得ない期間だ。

少子化問題は、ジェンダーと共通項だから、頭の堅い政治家にもコレ観てもらいたい。シアターには、女性に混じり複数人男性もいて嬉しかった。
LGBTQ+IAも、このジェンダーにしても、偏見や悪しき慣習を取り払い、悩める人の気持ちに寄り添えれば、世の中は変わる気がする。

心の奥底に潜む偏見や価値観は、悪気なく無意識に交わす会話に、ふっと現れる。女性同士間でも違和感は存在する。上司部下、同僚、嫁と義両親家族間、既婚未婚、子持ち、産まない事を選ぶ人など、どんどん多様化する価値観。
自分の価値観や常識が、ある立場の人を傷付けるケースがある事を、常に忘れないでいようと思う。

主役のチョンユミが、美しい。  
コンユが、優しい旦那役を好演。
明日への希望につながるようなラストが、良かった。
Lilly

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