よもぎ

82年生まれ、キム・ジヨンのよもぎのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
-
久々に嗚咽漏れる位バチバチに泣いた…。マスク生活が始まって以来ここまで映画鑑賞中のマスク着用が苦痛だった映画は初めてですわ…(主に号泣中の呼吸の苦しさとマスク染みへの危機感の為)
マジで一刻も早く収束してくれコロナ………。

この映画はタイトルの通りキム・ジヨン(チョン・ユミ)という韓国人のごく一般的な女性の人生をあくまで淡々と描いた作品。しかしそのごく普通の淡々とした日々のあちこちに潜むあまりに見知った見えない圧力の数々に胸がどんどん圧迫され苦しくなっていく。
一人の娘から妻になり嫁になり母になり…。
日本でも全く同じ様にごくごく当たり前のテンプレート的に考えられているその生き方の筈なのに、物語として眼前に突き付けられるとどうしようも無い程に息苦しくて、人知れず自分すら知らない内に壊れていくジヨンの姿に涙が止まらなかった。

学があろうが就職よりも誰かの嫁に行くことを勧められ、就職すれば男性より給料は低く昇進は遅く、痴漢に遭えば服装のせいだ警戒心が足りないと罵られ、結婚出産して仕事を辞めればどれ程育児に追われていようが怠惰だと責められ僻まれ、働き続けたら育児に専念しない愛情が足りないと責められ、夫の実家に行けば義父母の目を伺い働き通し…etc。
韓国で女性として生きる事は日本で同じく女性として生きる事にあまりに通じていて驚いた。し、これを仕方無い事、と当然の事の様に考えていた自分の心の麻痺具合にも壊れていくジヨンの姿を観ていて初めて気付かされたのが衝撃だった。
ジェンダーギャップ指数121位(世界153カ国中)な我が国日本の毒に侵されまくっとるがな…怖…(韓国は108位)。

せめて夫(コン・ユ)が優しい理解ある人で良かったけど、そんな夫であっても家事育児は"手伝う"だし育児休暇は読書や勉強出来る時間と考えてるのが本当に地獄感醸してて、でも物凄くリアルでした…相互不理解の地獄はキツい…。
それでも最後はそんな夫の意識も改善されて夫婦の理解も深まって良い方向に向かってくれて本当に良かった…。

「どうして女という性別に生まれただけでこんな扱いを受けなければならないのか」
一度でも考えた事のある人には例外無く深く突き刺さる、とてもしんどいけれどとても考えさせられる良い映画だった。
よもぎ

よもぎ