イーグル

82年生まれ、キム・ジヨンのイーグルのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.7
【女性も男性も感想を書いて欲しいと思う映画】
「この世で生きる」と必ずぶつかる問題なのに、誰にも教えてもらえない問題についてしっかりと描かれてます。

以下『ムービーウォッチメン』に採用していただいたメールから

83年生まれかつ結婚して、仕事をそこそこしており正に今子供をどうしようかと焦っている私に、この物語はとても重かったです。
共感しすぎの嵐でなんの感情起因かわからないですが、涙が止まりませんでした。

本作は特にひどい事件が起きるわけでもなく悪い人もおらず、感情をぶつけ合うわけでもないとても現実的な映画でした。そこに底知れぬ怖さを感じました。
なぜかというと、この映画はすぐそこにある現実の話であり終わりがない『私たち女』が向かうかもしれない未来の話だったからです。

私は子供を設けていないので、実際の気持ちはわかりません。ですがバリバリ働いていた同僚が育休に入り、復職した時、以前とは全然違うゆるめの仕事になっていくのを傍目で見ており、違和感を感じておりました。
今回その違和感の正体を映画でまざまざと見せられ、いろんな感情が胸に去来しました。

薄ら感じていた産後の女性のキャリアプラン、改めて地獄だと感じました。
子供をもうける、もうけないが産まれた時から己の性別の価値としてぶら下がっており、
その価値を発動すると、今まで死ぬきで築き上げたものが崩れ去る、という無理ゲーを働く女性は課されている、それを色んな立場の女性を通して色んな地獄を多角的に描かれており、絶望しました。

正直、男性はこの映画を見てもピンとくるところが少ないのではないかなと思います。
また、作中旦那のように「わかったふりして間違って寄り添う」はしないでほしいと感じました。わからないならそれで十分。その上で理解しようと努めてほしい、と。
この『地獄』は長年の社会システムと教育から成り立っているので、やすやすと解決する事はないと考えます。

ですが、この映画が存在すること。
そしてたくさんの女性がこの映画に共感すること、男性はこの映画を見ることから理解が始まるのではないでしょうか。
この素晴らしい映画をもっとたくさんの人に見てほしいと願うばかりです。
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