コマミー

フェアウェルのコマミーのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
4.7
【愛してるから伝えない】

※心待ちにしていたA24作品です。内容がとても良いとの事なので、今年中に鑑賞できて良かったです。



中国には、末期が迫った人に"本当の事を知らせず"に、真実を知るその親族や知り合いが本人の代わりに"精神的な重荷"を背負うという。

大切な人に死期や本当の病名を知らせない……、これだけの辛いことはあるのだろうか?

日本人も一応東洋の人間だが、医師からは死期までの期間を知らせられるし、病名も本人に知らせる。どちらかと言うと西洋寄りな考えを持つのが我々だ。だが、中国にはこのようなやり方があるなんて知らなかった。

知らせないし本人は知らないので、当然ながら、知ってる家族や知り合い以外は"いつも通りの習慣"を送る。知ってる人は涙を堪えながらも。

本当にこのレビューを書いてる間も泣きそうで、同時にこの家族の事を"いつまでも思い出してしまう"。

すごい"温かい"のだ。この家族の姿が。

特にお婆ちゃんの"ナイナイ"。なんとも"生命力に溢れていて"、自分の身体に異変を感じながらも、変わらず主人公の"ビリー"を中心とした家族を労る。
それを見つめるビリー。ナイナイの事が一番好きなビリー。家族の決断に疑問を感じ、砕け散りそうな思いを必至に"誤魔化している"。アメリカに父親と母親と移住して離ればなれだった、ナイナイとビリーが語り合う瞬間は、本当に…。

これは監督がラジオで話した家族の姿を、監督自身が映像化している。キャストの中には監督の"実際の大叔母さん"が出演しているなど、まさに監督の家族の映画という感じだ。"動くアルバム"のようだ。
「オーシャンズ8」などの大作に出演し続けている"オークワフィナ"が、非常に洗練された演技をしているのも見所だ。

レビューを書いてる自分は決してお婆ちゃん子ではないが、中学生の頃に亡くなった父方の祖母との思い出は確かに覚えている。母方の祖母は、糖尿病を患ったものの、まだ元気に暮らしている。去年お見舞いに行ったときは本当に嬉しかったし、父方の祖母は一緒に暮らしていたため、いつも自分の事を気にかけてくれた。

そうか、ビリーのその時の感情の中には、確かに"同じことが起きていた"に違いないと感じると、涙が出て、ナイナイも二人の自分の祖母が僕に対して感じた事と同じなんだなと思うと、また涙が出た。

愛してるから、苦しめない方法を選ぶ。


中国人の心にある、"尊敬すべき美しい家族の「愛」の伝えかた"が、ここにはあったのでした。


いつまでも、忘れません。この作品を。
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