ノラネコの呑んで観るシネマ

TENET テネットのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.2
あらゆる作品で時間軸をいじらねばいられない、時間フェチ監督のノーランが、遂に時間そのものをモチーフにしたSF。
アイディアはとても面白いし、前進する時間と後退する時間が入り混じるビジュアルも未見性がある。
ジャンボ機を破壊したりして、相変わらずやりたい放題。
しかし、面白いことは十分面白いが、今回はノーランの欠点もはっきり出てしまっている。
それは“説明下手”!
いや物理知識とかのことではない。
そりゃエントロピーとかの用語の意味は知ってる方が理解しやすいが、それ以前にストーリー上、画面上で起こっていることの説明が下手すぎる。
以前の作品でも下手は下手だったけど、設定がこれほど入り組んではいなかったので、それほど問題では無かった。
しかし本作は観ながら脳味噌をフル回転させても、説明下手と描写不足で何が起こってるのか分からず、後から考えて辻褄合せしなきゃならない所が多々ある。
特にクライマックスは全員が同じ制服にガスマスクなので、誰が誰やらさっぱり分からない。
あと時間と共にノーラン作品の両輪である“愛”の要素が薄かったことも、説明不足を際立たせる。
”愛“はやはり強くて、今回はエモーションで強引に押し流すことが出来なかったからだ。
怒涛の展開で150分はあっという間に過ぎてゆくし、楽しんだのは確か。
だが、もうちょっと語り口と見せ方がうまければ、余計なところに引っかかることも無く、もっと没頭して観ることが出来たのではないか。
その点がちょっと残念で、ノーラン作品の中では評価は低め。
もっとも、史上最悪の逆風の中でこれほどの大作の劇場公開に打って出てくれたことは、称賛に値すると思う。
ブログ記事:
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