都部

TENET テネットの都部のネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

TENETの雑感として一先ずは面白かったです

ただ大筋自体はシンプルなのに難解と称される部分が科学に基いたSF要素ではなく、情報の交通整理またその開示の仕方の不得手さから成る物が主であったのが個人的には肩透かしかなと。

そんな感じで取り留めのない印象やら感想やらを(鑑賞直後にバババーっと纏めてる文章なので拙文なのは申し訳ないです)。
ネタバレ御免!

作中において相棒であるニールがキャットの息子 アレックスの未来の姿であり、名前無き主人公の未来の相棒であるという考察に関しては本編通しての幾つかの描写や最後の台詞などを鑑みる限りでは同意せざるを得ないでしょう。

本作のプロットにおいて賛美されるべき点は概ねこの点にあるかのように思います――自分の死の運命を知りながらも微笑み過去の死地に赴く男と全てを理解し涙を流して何時か彼と再会する未来へと向けて歩み出すこの物語の主役。
友情の始まりと終わりの中間地点に位置するこの物語は、ブロマンスとして実に良質なそれであり、TENETという名の回文のタイトルが別の意味を持って見えてくる事は請け合いです(タイトルの間に位置するNの意味合いはNeilの頭文字のNとNo nameのNか?後者は思い付きにも程があるのでは?)。

本作はノーラン印のスパイ映画な訳ですが、それに付与されたオリジナリティである所の逆行の理屈自体は、理解した気にさせやすいように序盤から描写されていたように思います。いや、気の所為かもしれない。
というのも、過去作のインセプションなどでは明確に呈示される特異な現象の可不可や理論が本作においては所々曖昧に濁している点があり、早々にそれらの理屈の説明を放棄しているからこそ理解には至らず結果的に難解であると感じてしまう仕上がりなのではないかという印象でした。
逆行弾による貫通シーンの部分が未だに自分はよく分かってないというか、銃撃されたという事実が覆る訳でもないのに何故逆行しなければ治療出来ないのか...(単に手当が送れたから逆行する必要性があったとも思いにくいしな)。
これに加えて用語を無駄に複雑にさせてくるのはちょっと...と文句言いたくなりますよね。分かりやすいのが、アルゴリズム(アルゴリズムではない)とプルトニウム(プルトニウムではない)で、いや、そこは臨機応変に別の名称くらい考えてくれよと......これは無理がある非難ですかね。

ノーラン自腹によるジェット機爆発シーンでしたが音響の良い映画館で鑑賞した事もあり、非常に良い爆発音でした(規模としては思ってたよりも大爆発!!!って感じではなかったので、まあまあまあ)。アクションに関しては厨房のシーンは割と好きなんですけど、空港での逆行を混じえての格闘シーンはヨリのカット多めなのもあって、もうちょっと細かくアクションを見たかったなぁと。ある種 山場として存在する中盤のカーチェイス(?)は非常に良かったですね。ここは文句無し。逆行する乗用車からの逃走、TETETの真髄を惜しみなく演出として発揮させている部分で視覚的にもアガるシーンでした。

明確な不満点として上げられそうなキャット周りのサブプロットですが、後々回収する布石として使うにしてもこの様なら前述したブロマンスの点にフォーカスを当てた方が良かったのではないかなぁと思わなくもないです。虐げられるシーンが多い・長いとかは個人的な思想を抜きして鑑賞した場合は問題ではなく、重要なのはその着地点として存在する発砲までの流れが他に比べると粗雑ではないかと。あれでは利用されるだけされて、その癇癪で合図の前に発砲。そうして個人の納得を優先して、最後の窮地を引き起こした道化止まりなのでは...。

と、第一印象としてはそんな感じです。
不満ばかり漏らしていますが、時代の最先端を生きるノーラン監督による映像革命また集大成の作品としてはなかなかの良作であり、一見の価値アリな面白い映画であることに否定の余地はないでしょう。
良い映画体験をしました。
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