このレビューはネタバレを含みます
2回目@シアタス調布ULTILA 9/22
1回目の見落としを拾いつつ、改めて「善良で屈強な主人公が何度もしてやられながらも世界を救う話」というこれだけ聞くと普通によくある話であると気づく。だけどほとんど誰もその部分の話をしていないのが面白い(無理もない)。
画面や発想はもちろんすごいなあと思うのだけれど、冒頭のタイトルが表示されるまでの何でもない導入っぽい部分が逆行チラ見せ+主人公の性格の明示(時間ギリギリまで観客を守る、仲間が全滅したと聞いて涙するetc)に加え、お前…!と声なき声で叫ぶ事案も挿し挟まって完璧すぎる。
順行と逆行の仕組みはあんまり深く考えたら負けだと思い、回転ドアを境に時間の流れが折り返している、ぐらいのフィーリングで鑑賞。
10分作戦時のニールがどういう風に動いていたのか初見で把握しきれないままだったところをしっかり理解できたので満足。多分初回は処理する情報が多すぎてあの時間帯には頭パンクしてた。
TENETって何だったのか、という点についてはあんまり印象は変わっていない。けれど見直すと各人、各立ち位置での主義主張が盛んに行われていて興味深かった。
それだけ盛り込んでもそれらが埋もれて目立たないこと自体が「撮りたいものを撮る」というノーラン監督の『主張』なのかもなー、とちょっと思う。もう2回ぐらい見るかも。
以下は初見時の感想---
観終わって1時間経つけどまだ衝撃が強すぎて気持ち悪い。頭がぐらぐらする。長さを全く感じない密度と時間のあれこれがすごい。
ネタバレというか、以下「なんでTENETって名前だったの?」と考えた時のメモ。また観たら考え変わるかも。
素直に考えると秘密主義(作中でなんて言ってたか忘れた)なんだけど無駄な深読み。冒頭の15分ぐらいが逆行のチラ見せだけじゃないんじゃないかという話。
護衛対象を守るのはもちろん、観客への被害も最小限にしようとしたあたりから名もなき男は「自分を犠牲にしてでも被害を最小限にして他の命を守る」奴だけれど、キャットが撃たれた時にニールに嘘をついた通り本来であれば犠牲は厭わないのが普通なんだと思う。
ただこの姿勢がキャットを助けると決めたことや空港で被害者を出さないことに拘ったこと(=キャットの搬送車を確保できた、と解釈した)ことに繋がって結果的にキャットを刺客として送り込むことに成功するという…。
TENETって名前をつけたのは未来の名もなき男なんだろうけれど、介入を最小限にする秘密主義と同時にそういう自分が主人公になった所以がその信条だったとかっていうのが込められてたんじゃないかという深読みが止まらない。だからこそニールとの別れはそりゃあ泣くわ、と納得(ニール…お前ってやつは…)。
逆行の細かい組み立てを追うのに観客が必死になってる中、監督があの画面で意図してこれを仕込んでいたとしたら、マジで、本当に、最高に頭がおかしい(褒めてる)。
トラヴィス・スコット、バックトラックが心拍っぽくて最高のトリップ体験を補助してくれた。