psychocandy

ひとよのpsychocandyのネタバレレビュー・内容・結末

ひとよ(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

虐待を繰り返す父親から我が子を救うべく殺害に及んでしまった母親と、そのことで心に深い傷を負いながらその後の人生を送ってきた3人の兄妹。出所後の母親とその子供たちの再生に向けた葛藤を描く濃厚な家族ドラマです。

人気、実力を兼ね備えた豪華キャストによる競演が見所の一つですが、中でも母親こはるを演じる田中裕子さんの存在感(オーラ)が凄い。子供たちのために自ら「殺人」という過ちを犯すことを選択した母親の揺るぎない覚悟と子供たちに対する深い愛情。どんなに父親が頑張ったところで最後はやっぱり「母性」には敵わない。あらためてそんなことを感じさせる圧倒的な演技でした。

終始重苦しい雰囲気のストーリーではありますが、そんな中において、一番胸に刺さったシーンは、母親が(昔、雄二がしたように)自ら「デラべっぴん」(笑)を盗んだことをネタに3人の兄妹が談笑しているところ。園子(松岡茉優)が放った「『復刻版』作ってんじゃねーよ!」というセリフに、なぜか胸が熱くなってしまいました。壮絶な過去を背負うことになった4人が、それでもやっぱり紛れもなく「家族」なんだということがダイレクトに伝わってくるこのシーンに、この作品の素晴らしさが凝縮されているような気がしました。

この映画を観て、しばらく連絡を取っていない母親の声が聴きたくなりました。暗くて重苦しい展開の中、最後にはそんな思いにさせてくれる素敵な作品です。
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