psychocandy

過去のない男のpsychocandyのネタバレレビュー・内容・結末

過去のない男(2002年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

アキ・カウリスマキ監督作の鑑賞は、先日観た「浮き雲」に続いて2作品目。同監督の「敗者三部作」といわれる作品群の2作目でもあります。

暴漢に襲われて重傷を負い記憶喪失になった男の、その後いろいろあるお話し。

まず冒頭の、暴漢に襲われて記憶喪失になるまでの くだり からして、いかにもカウリスマキ監督っぽく、シリアスさがほとんどない…(というか、「テキトー」過ぎんか?)。その後、記憶喪失のまま新しい人生を送ることになるわけですが、その「底辺」な暮らしぶりに反して、これまた ほとんど悲壮感がない。まさにカウリスマキ・ワールド。

作品全編は、こうした、どこかシニカルで絶妙な「外し」の効いた独特の世界観で描かれていますが、その根底に感じるのは、「人生いろいろあるけど、悲観していても仕方ない」という、ある種の「”前向きな”諦め」というか「開き直り」みたいなもの。

現実と未来は、過去からの連続性で成り立っているという当たり前の事実。だけど、そのことによって必要以上に過去に縛られて、一歩踏み出せないでいないか。この映画は、そんな、未来へ踏み出すための勇気みたいなものを与えてくれる作品でした。

それにしても、この世界観は癖になる。
psychocandy

psychocandy