ばきちゃん

ひとよのばきちゃんのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.7
二度めの鑑賞。とても暗い映画という印象があって、テレビ放送を録画したものの、なかなか見る気になれなかった。が、再度の鑑賞で、映画の印象がかなり変わった。むしろ、希望に満ちた映画に思えた。象徴的な親子が三組(あるいは四組)出てくる。主人公一家、そこの従業員の家族。それぞれ苦悩し、葛藤し、決断する。物語の中心は、子どもを守るため、事件を起こし、服役の後戻ってきた母親。成長して今や大人になった3人の子は、戸惑う。母の行為は、聖母か?ただの殺人者か?自由に生きて、という母の願いは、世間の壁に阻まれ、ままならない。兄妹たちが思うように生きられなかったのは、母のせい?母を恨み、求め、衝突する家族の再生はなるのか?
ネタバレを避けて表現すれば、そんな映画だ。

出演者がみんないい。吃音の長男が鈴木亮平、別居中の妻子がいる。家を出て東京でライターをしている次男が佐藤健、美容師になれずいわゆる水商売の長女松岡茉優、母親役は田中裕子。終始自信なさげな鈴木亮平も、三流ライターっぽい佐藤健のやさぐれ感も、男運のなさそうな松岡茉優もハマり役。厳しい世間の目の中でも、経営するタクシー会社の従業員たちの理解が救いで、演じる俳優も多彩で多才。スパイスとしての佐々木蔵之介も効いてるし、何といっても、田中裕子ってやはりすごい。

この映画のタイトルはひらがなで「ひとよ」。だが、スクリーンに浮かぶのは「一夜」の文字。そして、私の耳には「人よ」に聞こえた。そんな映画だ。
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