蛇らい

スケアリーストーリーズ 怖い本の蛇らいのレビュー・感想・評価

3.6
監督の前作でも解剖というシンボリックな側面から人間が感じる恐怖を表現していたが、今作は物語や伝承という側面から紐解いていく。

怖いモノを乗り越えるべき壁と位置付けたときの物語の運び方が、同じアプローチをとった『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』二部作なんかよりも何倍もうまい。

サラの本に物語が紡がれると、その物語通りの顛末を向かえることになる。単純に強制的な死に向かわされる恐怖はもちろん、自分の意思とは裏腹に人生を左右するような出来事が自分以外の誰かによりもたらされることの残酷さも描いている。

時折挿入される社会情勢のテレビから流れるニュース、ラストのベトナム戦争に向かう姿なんかは正にそうで、オカルト的な側面だけではなく、現実にもこうやっての他者の手によって人生(物語)に筆が加えられ、人生を壊されることが許された時代があったことを戒めるような演出が素晴らしい。

注目すべきモンスターはやはりペール・レディ。これぞデルトロ印たる堂々の風格。言葉こそ発さないものの、小さな瞳が不気味に瞬く表情は相手を捉えているぞという無言の脅迫。さすがです。

デルトロはただのホラーで終わるような作品は作らない。映画を通して何か得るものがなければならないと気にかけているのが彼の作品の端々から伝わってくる。そういう思いで作られたものを率先して観ていきたい。
蛇らい

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