このレビューはネタバレを含みます
フィルマの評価は思ったより低いけれど、読書好き、お仕事ドラマ好き、かつ(出版ではないけど)翻訳業の自分にとって、この作品はとても面白かったです。
翻訳者は言語が変わってもオリジナルの意図やニュアンスが正確に伝わることを意識して仕事をしている。基本「黒子」で表には出ない。作者に会えないのはおそらくデフォルト。ただ、ここでは、翻訳版の全言語の翻訳者を一か所に監禁し、通読して全体像と世界観を把握してから作業に取り組む機会を与えず、章ごとに配布し翻訳を回収する。作品そのものへの愛より漏洩による利益損失を何よりも危惧する拝金主義の出版社代表がやりそうなことだなと。
同じ作品の、違う言語の翻訳者と作品に関する愛情を語り合う場面や、端々で感じる教養、出版社代表が判らない言語を使いバトルするところでは全員が数か国語を当たり前に話したり瞬時にスムーズに言語を切り替える(オルガが中国語話したり)とか、オタク萌えするシーン、個人の事情を語る切ないシーンもあり、ストーリー的にも何回か快哉を叫びました。
タイトルだけは知ってたけど、こんな内容だったとは。しかも、実話に基づくエピソードも入っていると。観て良かったです。イタリア版の翻訳者は、インビジブル・ウィットネスのリッカルド・スカマルでした。