- 自分は光をにぎっている -
- 今も今とてにぎっている -
- しかも折々は考える -
- この手のひらを開けてみたら -
- 空っぽではあるまいか -
- 空っぽであったらどうしよう -
当たり前にそこにあった、日々の営みに涙が出る。
光の一筋。音の一粒。言葉の一句。
全て形のないものだけれど、形がないからこそ消えることはなく、自分の手の中に残り続けて必要な時に自分を助ける光になってくれる。
一つ一つの営みが、丁寧で、繊細で、美しくて、それぞれのシーンが全て詩の一節のような、美しくも力強い作品でした…!
オールタイムベストにくい込んでくるくらい良かった…!
ゆらぐ光、たゆたう湖面、そよぐ風、立ち込める湯気、下町の人々の営み。
なんてことない風景なのだけど、本当に綺麗な映像と音で、泣きたくなる。
言葉も、動きも、とても少ない作品だからこそ、一つ一つの動きや言葉に命が宿っているし、松本穂香の声がたまらなく心に染み入ります。
最後の朗読の、寂しさと力強さの相まった情動は、もう言葉にできなくて、"是非観て…!"としか言えません。
何度も何度も、そこにあるものを確かめるように、お湯の温度を確かめる場面がすごく印象的でした。
お湯の温度を感じながら、握ってはこぼれ落ち、なくなっても、確かにその感触は残っている。
"形あるものはなくなってしまうけれど、言葉だけはずっと残る。"
"言葉は心。心は光だから。"
できることから。ひとつずつ。
たとえそれが、本当に些細で、なくなってしまうように感じても。
確かにそれは残り続けるのだから。
- 自分は光をにぎっている -
- 今も今とてにぎっている -
- しかも折々は考える -
- この手のひらを開けてみたら -
- 空っぽではあるまいか -
- 空っぽであったらどうしよう -
- けれど自分はにぎっている -
- いよいよしっかり握るのだ -
- あんなに激しい嵐の中で -
- 掴んだ光だ -
- 離すものか -
- どんな事があっても -
- もう石になれ、拳 -
- この生きの苦しみ -
- 苦しければ苦しいほど -
- 自分は光をにぎりしめる -
山村暮鳥