映画好きの柴犬

わたしは光をにぎっているの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
3.6
ちゃんと終わって、ちゃんと前を向く

 実家の旅館が廃業したため、父の知人(光石研)を頼って都内の銭湯で働くことになった宮川澪(松本穂香)が、再開発に揺れる地域の人たちのと交流を通して成長していく姿を描く、人情ドラマ。

 「静かな雨」からの中川龍太郎監督つながり。中川監督らしい淡々とした作品だけど、コメディ色強め。渡辺大知、徳永えり、忍足修吾ら脇を占める俳優陣が、なかなかアクの強いキャラを演じていて印象深い。

 反面、松本穂香演じる宮川澪は、コミュニケーションが苦手なキャラ設定で、感情がほとんど出てこない。それはいいのだけど、そんなキャラが、銭湯という交流の場を通して成長していくはずが、折角アクの強い脇キャラを用意した割に、あまり相乗効果が感じられないのが勿体無い。

 一方、もう一つのテーマ、廃業する実家の旅館と再開発で失われていく下町を重ね合わせた喪失感からどう前を向いていくかの方が、光石研との関係性が感じられて良かった。