TOT

クイーン・オブ・アイルランドのTOTのレビュー・感想・評価

4.0
同性愛が犯罪だった時代に生まれた田舎育ちの少年ローリー・オニールがバブル期の日本に渡り、ドラァグクィーン“パンティ”としてブレイク。
帰国後はゲイ・アクティビストになり、HIV陽性と診断されながらも、国に潜むホモフォビアを指摘して、やがて同性婚合法化投票の中心的存在となっていく。
田舎を逃れて美大に進学するもドラァグに魅せられたローリーが日本に渡り、パンティと呼ばれるようになってお立ち台に立つ映像、めちゃバブル。バブリシャス。
ステージングはとにかくパワフルで、パンティを見て勇気づけられたという男性の「女性っぽさは弱さとされてきたど、それは違う、強さなんだとわかった」って言葉すごくわかりみ。
2014年にローリーは公営テレビRTEでホモフォビアのジャーナリストを名指ししRTEがすぐさま賠償したことで、公営テレビが差別を認めるのかと世論と国会を揺るがす大騒動に。
事態を受けて彼がパンティとして話したスピーチは、ホモフォビアへの非難だけでなき、人種や性差別に悩むあらゆる人に響く切実さに溢れている。
YouTubeで字幕付き(ちょい変だけど)で見れるので見てほしい。
https://youtu.be/WXayhUzWnl0?t=1m50s
映画で使われたこの部分。私はゲイではなくヘテロセクシャルの女性だけれど、地下鉄の通りすがりに卑猥な差別語と缶ジュースを投げられたことがある。
たしかにそんなに痛みはない。
でもその後に自分を責めて自己嫌悪に陥った。
だからこのスピーチは自分ごとのように響いた。
映画は良く訳されてたのでほんと公開されたらいいな。
スピーチ後、マドンナやステーヴン・フライなどパンティをサポートする声が高まり“Team Panti”という運動にまで!
その辺の詳細はこちらのブログが詳しかった。http://inutomchan0105.blog127.fc2.com/blog-entry-1074.html
2015年5月23日、国民投票の結果、同性婚が合法化される世界初の国家となったアイルランド。
合法化キャンペーンの立役者であるパンティが、歓喜に沸くダブリン城でアンドリュー・スコットとハグする姿も映る。
そうだ、アンスコさんもキャンペーン参加してたもんね。
ググッたら、アンドリューは2014年のRTEの騒動の際も映画祭で“Team Panti”のバッジを付けてサポート表明していた。
https://www.independent.ie/entertainment/stars-of-jameson-closing-film-the-stag-show-support-for-miss-panti-bliss-30035020.html
少数者だったはずの少年がいつのまにか少数の声を集める存在になり、人を、国を動かす。
涙涙で見進めたら、成功して田舎での凱旋公演を控えた彼が「不思議。ここが嫌で離れたのに今では歓迎されてる。この気持ち、田舎に育った‬ゲイじゃなきゃ分からない」って言うとこでまた泣いてしまった。
昨年10月5日に特別上映された時はパンティ本人も来日してたんだよね(くそ〜パンティ会いたかった〜〜!)
https://youtu.be/ZaYvWQ58CZE
ほんと素晴らしい作品で、また観たい。
国の歴史を変えた個人史の、笑いと涙に彩られた数奇なドキュメンタリー。
ぜひ公開を(んで、パンティまた来日して!)

EUフィルムデーズ
TOT

TOT