高田ハン

パラサイト 半地下の家族の高田ハンのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
「パラサイト 半地下の家族」このタイトルの秀逸さに舌を巻いた

ある意味中盤までは予想通りの展開だった。「こういう感じね」と油断した隙にそこからの怒涛の展開に息を飲んだのはいうまでもない。

韓国の半地下で暮らしている家族が金持ち家族にあの手この手でパラサイトする。その手腕が巧みで、見ていてがっかりすることもなく楽しくみることができた。

しかしここまではありきたり。

ここからの展開はまさにちゃぶ台返しだった。タイトルの意味であったりとかポスターの意味とか全てがラスト30分に込められている。この30分は今まで見た映画の中でもっとも丁寧に築き上げられたストーリーを破壊する威力があった。

個人的にはこの「半地下の家族」というタイトルが大好きになった。韓国が抱える格差社会の中でも、この半地下で暮らしている家族というのは実際に存在しているらしい。ポスターを見ても、その振る舞いだとか表情だとかで染み付いてしまったその人の格はどう拭っても落ちることはない。

特に途中に出てきた"匂い"のセリフは個人的にグッとくる表現だった。自分が生まれた時の環境は自分で決めることはできない。そして自分の置かれている環境を正しく認識できる人間もいない。自分の中の常識というのは自分の周りの人間によって形成されるので、地元にいる限りそれが否定されることはない。

だけれど一度地元から離れると周りとの差に愕然と鳴ることがある。ぼくも上京した時に感じた一種の潜在的コンプレックスのようなものの表層化に近い。

一度この"匂い"のことを気づいてしまうと、それは一生取れることのない呪いになる。ことあるごとに自分の"匂い"が気になり、自分という人間の格が明確になり、周りの人間とは不釣り合いであるように感じ始めるからだ。

人間とは周りと比べて自分を作り出していく。一度作り上げた人格というのは変えることは難しい。取り繕うことなんて不可能だ。

しかしそんな中でも夢を見ることは平等に与えられている。それを叶えられるかどうかは自分次第だ。
高田ハン

高田ハン