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パラサイト 半地下の家族のmaiのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

楽しみに楽しみを重ねすぎて、ハードルがめちゃくちゃに上がってたのですが、鑑賞して「いや、軽々とハードル越えてきた…」と思いました。

「格差を描いた」と一言で言ってしまえば、それまでなのですが、今までの映画と何が違うのかと聞かれれば、間違いなくそのカメラワークや演出のうまさと、脚本の秀逸さだと思います。
これはこの映画に一貫してることなのですが、「ユーモアをちりばめる」といううまさがあるんです…だから、テーマ自体は重たいし、もう観てられないとまで思うシーンもあるけれど、なんとか観ていられる。というか、目が離せない。
そして、対比や演出がことごとくうますぎる。
モールス信号と半地下の切れかかった電球、豪雨の高級住宅街と半地下…露骨でないのに、それとなく観客が気づけてしまうくらいの完璧さです。
そして、日常シーンを加えつつ、どこか異様さを感じさせる演出に、役者全員の演技力の高さ。特に、家政婦の旦那さんは目力強すぎてトラウマになりそう。笑
母親の「ザ・韓国映画で描かれる母親」像も完璧だし、父親の内に秘めたはずの思いがふつふつと湧き上がっていく様もリアルです。

初めは「セレブ一家を利用しよう」くらいの詐欺だったはずが、後半で明かされる地下の秘密によって、一気に様変わりした瞬間から怒涛の展開が待ち受けていて…もうその加速ぶりが最高に良かったです。
その瞬間を機に、利用して貧困を脱出できると予感していた半地下の家族が一転していく様子までも素晴らしいくらいに描かれてます。
実際は、セレブ一家からすれば自分たちは所詮雇われの身で「半地下のにおい」はその格差が絶対に拭えないものなのだと自覚させるには十分だったと思います。
ただここで大事なのは「格差が不勉強・不誠実から生まれたものではない」ということです。半地下の家族4人とも、セレブ一家を騙せるくらいには各々の分野での能力を持っているんです。しかし、それを活かす機会が与えられない、得ようとしてもその機会を貰うスタートラインにすら立てない…それこそが本当の「貧富の格差」だと見せつけられた気がします。

そして、そこからの「格差」へのやり場のなさすぎる怒りや不満がふつふつと煮立っていく様があまりにもリアルでした。

さらに伏線があっちこっちと細かく回収されていくのもいい。

ここまでかなりの衝撃を受けるのですが、最後の最後で追い討ちをかけるようにラストシーンが突き刺さります。
雇い主である社長を殺してしまい、地下へと逃げ込んだ父のモールス信号を受け取った息子…妹はなくなるし、自分に起きたことには笑いが止まらないし…でも、そこから大金を稼いで、その家を買えるまでになり、最後父親と再会…という安易なハッピーエンドとも取れるシーンを見せておいてからの、「これが彼の夢でした」という。しかも、半地下でその夢を綴った手紙を読ませるというのもズルすぎる。
きっとこのシーンを見た誰しもが「彼がこうなることはないんだろうな」と思うはずです。この「夢は叶えられない」という部分でもが、映画のメッセージになっていて、どこまで秀逸な脚本をかけてしまってるんだと更なる衝撃を受けてる間にエンドロールです。
エンドロール中の歌までもが映画に即したもので、もう完成度が完璧すぎて。

韓国映画あるある、父親・母親は冴えないけれど、あとはみんな美男美女。
貧富の格差を環境や仕草から描くうまさ、そして映像の綺麗さと、異質な雰囲気の演出の素晴らしさ。
これだから韓国映画って癖になるよね…という良いところを詰め込んだ上で、脚本があまりにも良すぎる。そして、メッセージ性が強いのに、ブラックユーモアを忘れないという。

絶対にネタバレ見ずに観て、衝撃を受けて欲しい作品です。
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