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パラサイト 半地下の家族のdeenityのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0
カンヌではパルムドール、ゴールデングローブでは外国語作品賞を受賞と世界的に評価されているポン・ジュノ監督の新作。

タイトル通り、ある貧困家庭のキム一家が富裕家庭内にパラサイトしていくという内容。当たり障りのない点だけ言えば、まずこの設定からもわかる通り、はっきりと格差社会をテーマにした作品ですね。
サブタイトルにあるように、半地下というのは主演家族が生活をする棲家であり、半分地上半分地下という構造をしています。そのため、道端で立ちションでもしようものなら小便をかけられてしまうという住まいなわけです。
本作は意図的にそういう上下関係を示すようなメタファーが多くありました。富裕家庭の立派なパク家の屋敷は坂の上に据えられていますし、彼らの半地下ハウスなんかは半地下である以前にかなり下の方に建てられているわけです。そこを行き来する際に坂や階段を上がったり下ったりするシーンこそが象徴的ですし、何ならパク家内での構図がそうでした。キム家のトイレの位置とかもまさにですね。

こういうメタファーが散りばめられていて、格差社会がテーマとなると堅苦しくなりそうですが、実際はコメディです。そしてホラーです。スリラーでもあります。どんな作品なんだ!?ってなるかもしれませんが、まさにいろんな要素が凝縮されて、全く飽きることなく見れる作品です。





ネタバレに突入していきますが、前半はコメディ要素が満載ですね。いとも簡単にキム家がパラサイトしていくわけですが、テンポの良さも○。また、しっかりと各キャラクターの特徴を描きながら伏線もしっかり張っていく辺りがすでに秀抜でしたね。
特にまさかの緊急とんぼ返りでのドタバタ劇は笑いどころもおさえつつ、同時にかなりのスリラー要素も持ち合わせており、後半のホラー的な展開への移行として絶妙でした。そんなドタバタの中でもソファーの上で寛ぐパク夫妻と足元でコソコソするキム一家の構図のメタファーが抜け目ないですね。

後半の見せ方はまさにホラーです。体に力が自ずと入ってしまうような感じでした。
だけどそこでもやはり印象的なのは父の無計画である理由と匂いへのプライド。彼等家族だって別に望んであの生活に至ったわけではないし、それでもどうしようもない社会の中で生きていくしかない理不尽さ。計画を持ったところでそれが無に帰するかもしれない。そしてそういう引き金を引いてくるのが富裕層で、身体に染みつく匂いに関して指摘されるのもきっと臭いからとかそういうシンプルに傷つくわけじゃなくて、もっと根本的にプライドが傷つけられてることが許せないのだろうと。

そう思うとやはりこの作品は様々なジャンルの面白さが込められている以上に社会問題をテーマにしている部分でも評価すべきで、それを娯楽性も持たせて楽しめた辺りに文句なしの賞賛を送りたい。
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