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パラサイト 半地下の家族のKanaのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
お金も仕事も将来の計画もなくその日暮らしで生きてきた4人家族が、背伸びしても届かないような上流階級の一家と関わりを持ったことで、世界の歯車が狂い出す混沌の物語。

事前情報なしで見ることをお勧めします。



コメディからホラーまで着地点の見えないミステリアスな展開と、表と裏、光と闇、上と下を象徴的に描いたSFダークファンタジーのような表現に引き込まれました。
やっぱりこうなるよね…というお決まりの展開から、次の瞬間何が起こるか何度も予想を裏切られる怒涛の展開まで様々な要素とシーンが目白押し。
人が落ち込むと下を見て、歓喜の時に顔を上げるのは、重力に逆らうにはエネルギーが必要だからで。
どんどん昇る人がいるほど、どんどん堕ちる人がいるという、エネルギー保存則のような世界の縮図を見てしまいました。

いろんなことが起きすぎて感想を言葉にするのが難しいのに、ストーリーや流れがすんなり頭に入ってくるのは、複雑なセリフはないけれど重要なワードだけを洗脳のように何度も登場させているからかなと。
登場人物もみんなキャラが濃く、それぞれの心情とかは関係なくゲームの駒のように役割をこなしていくのでテキパキ話が進みます。
それぞれの役割ということで、まるで全く違う映画を見ているような2つの家族の描き分けがすごい。
光や音や時間など、完全に生きている世界が違うようで、隔絶されていた2つの世界をつなぐ雨のシーンが、むしろ永遠に埋まらないんじゃないかと思うほど溝の深さを物語っているのが皮肉。
そして最後に、映画では絶対に伝えられない感覚が決定的に両者を分断しているというのが秀逸で、画面からまるでそれを感じ取れるような気さえしてきます。

天は人の上に人を造り、人の下に人を造っていて、上から下へ、与える側と受け取る側という関係はどうやっても解消しようがないんだよ…という物哀しい現実を押し付けられたようでした。
なのにやたら明るいエンディングソング笑
計画を立てなければ何が起きても問題ないけれど、計画を立てないとやっぱり何も起こせないわけで、それは未来に夢や希望を抱かないということと同じになってしまうわけで、難しい…。
金持ちの息子と貧乏人の息子が同じ特技を持つのもとても皮肉。
地下で暮らす人は、韓国には本当にそんなにたくさんいるんだろうか。
それとも何かのメタファーや過激な一例を示しただけ?

ちなみにこの映画を同じく格差社会や貧困問題を扱う万引き家族と比べる方を見かけましたが、私は万引き家族より断然こっちの方がいいと思う。
是枝さんの映画って悲劇的に描きすぎていて不自然なんですよね…視野が狭いというか。
メッセージ性が強過ぎて、映画としてストーリーが面白いかどうかよりも社会問題をどう描くかという視点で見てしまう。
このくらいぶっ飛んでる方が作品としては面白いし頭に入りやすい。
それにやっぱり、どちらかだけに焦点を当てるのではなく、上と下の比較というテーマが良かった気がします。
どちらの視点で見るかは観客次第という、善悪が論議の的になるような作り方がより良い。
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