シマダジブンスキー

パラサイト 半地下の家族のシマダジブンスキーのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【JAPにオスカー難しい?】
まず納得の行くオチでした。「主人公家族の母子が豪邸の地下に籠った父と劇的な再会」が出来るように頑張りますで締めくくった感じ。悪い行いをした人にそんなに人生は上手く行かせないみたいな話でもあるけど、そこまで悪いことはしてないように映る。タイトル通り「パラサイト」はしてたけど、しっかりキム家の為に仕事はしてて、勿論その仕事の奪い方は酷いのかもしれないけど、そこまで悪く感じさせないような見事な奪取劇は主人公家族に肩入れさせるには充分だったように思える。

とはいえ、主人公に対して一見ヒールのように映る富豪のキム一家が一番不幸だと気付いたのは一緒に見た妻の指摘からだ。彼らは何も悪いことはしてないのに父が死に豪邸から追いやられてしまう。たまたま妻が純粋だったばっかりに。半地下に住む貧困層と高い場所に住む富裕層の韓国の格差社会を映した作品と表現されるけど、きっとこの家事は家政婦任せで会話の端々にカタコト英語を挟むような社長婦人もあるあるに違いない。そこに日本人の知らない韓国があるのだろう。

言われてみれば、主人公兄妹がアジア丸だしのビジュアルなのにルー大柴的なピエール瀧的な英語圏の名前を名乗ってた事で昔の職場を思い出した。高級賃貸マンションに住んでる韓国人でそういう風な人がいたなぁ。自分の名前に誇りとかないのかなぁなんて思っちゃう。もしかしたら、そういう英語名前に踊らされちゃう権力ビッチとして奥さんを描いていたのかもしれない。個人的には木村佳乃に見えた。

そういう母を見透かしていた息子は天才だったのかどうか?なぜ、あんな利かん坊キャラだったのに絵画の先生には従順だったのか?地下からのモールス信号を読み取れていなかったのか?彼に関しては謎だらけだ。

そして娘である。結果家庭教師を二人とも惚れさせて「彼女が大学に合格したら付き合う」と言わしめた。きっとその仕事を紹介した彼は工学部の友人達はイチコロで落とされて奪われちゃうけど、彼ならメッキが剥がれて半地下がバレて落とそうとしないくらいの皮算用があってもおかしくない。ひょっとしたら、娘の魔性っぷりは母譲りなんじゃないかって。そうなると母親のダメっぷりも辻褄が合う気がします。

そんな高台と半地下の争いかと思われたシナリオに地下と言う予想外の空間が現れてこの作品がホラーサスペンスにしたわけですが、地下からの逆襲が面白い。

セキュリティの観点から言ったら「あんたが元家政婦の証拠無いからダメ」ってなるんだけど、それやったら話終わっちゃうわけですが、冷静になると地下の逆襲からのギアの上げ方はワクワクしました。韓国人による北朝鮮国営放送のパロディとかから最後の地下の夫による残虐なシーンとか二回目にはワクワクしてる自分がいました。
あと、元家政婦のおばちゃんが戸棚を開けようと鯉のぼりみたいに横になって開いた時にごろごろとマグロの様に転げて言ったシーンと主人公家族の奥さんに蹴られた時の階段落ち、痛いシーンでしたけど吹くくらい笑ってしまいました。やっぱり、地下の家族は魅力的だった。
あと、余談だけど訪問セールスで来たおばちゃんがあのおばちゃんと同じビジュアルで戦々恐々としました。

自分の中で「レオン」の序盤に狂ったゲイリー・オールドマンがナタリー・ポートマンの両親を殺してしまうシーンがあってあれは私的に映画で大好きなシーンですが、それに匹敵する名シーンが地下の夫がバースデーパーティーを襲撃するシーンでしたね。あのサイコパスっぷりは最高でした。

それにしてもよくアカデミー賞作品賞取れたなって思う。過去20年の受賞作を見たら2003年の「シカゴ」見て以来一切見てない自分が言うのもなんだけどプロレスのWWEしかりアメリカのエンターテイメントは『アメリカ・イズ・ナンバー1』じゃないと駄目なイメージがあり、そんなのばっかをアカデミー会員は選ぶもんだと思ってたから今回は内容的に見て超予想外でした、カンヌ映画祭の方はなんとなく分かりましたが。ただ、分析してみると韓国の問題でもアメリカ人が共有できる話題が作品にあったのがアカデミー会員を引き留めた要因たらしめたんだと思います。それが地下からの逆襲のパート序盤でキムジョンウォンを揶揄したあのシーンだと思う。

結局、トランプ大統領が北朝鮮に寄り添ってはいるけど、彼らにとっては今一番の敵には間違いなくて、南北仲良くみたいな風潮あるけど、庶民感情では馬鹿にしてるのを知り「やっぱりそうじゃん」みたいな票が入った気がする。

映画の発明という意味では『カメラを止めるな』だって十分新しい様な気がするけど、それは俺が映画をそんなに見てないからなのでしょうか。でも、アカデミー賞を取るにはアメリカ人の共感を得ないといけない、そんな説が正しいとするならパラサイトがこじ開けた作品賞の扉を日本映画はそんなに努力しても開けらんないだろうなぁって思った。

日本における様々な現象でアメリカ人の共感を得られることってないでしょ?日本映画が日本らしさを突き詰めれば突き詰めるほどアカデミー作品賞は遠のいていく、だから取りたかったらアメリカになびいて、アメリカ人になるしかないんじゃないかって思います。そうなると、いつかアメリカ合衆国51番目の州として日本がジャポニカ州になれば話は変わるかもしれません。

言ってもアメリカ人の評価でしかありませんから 気にしないでも良いんじゃないかって思ったりしますけど、評価されたら収益は莫大だから映画関係者が目指すというのはやむを得ないのかもしれない。もし、目指すのであれば「傾向と対策あるからね」とは伝えたいもんです。でも、アメリカ人に寄せた作品作りなんて糞つまんない映画になるに違いないですね。今回の「パラサイト」がアカデミー作品賞を受賞した事が日本映画にも希望を与えたみたいなコメントもあったけど、そうでもねぇよとは思う。

作品の感想を書いてる中で日本映画の話で終わるのは申し訳ないので別の言葉で締めます。無理のない内容でそれこそ半地下の更に地下を住む人がいる展開とかも解釈に使用によってはファンタジーみたいな解釈で済まされそうだけどしっかりリアリティある展開に思わせているのはさすがだと思う。そして、キム・ジョンウォンのくだりは確かにアメリカ人に評価を受けたという事で書いてるけど、それがきっと無理矢理な話ではないという所で純韓国で受賞したのだから評価できるところであると思う。監督のポン・ジュノって「ディテール・ポン」って言う愛称で呼ばれてるらしい。その名の通り徹底的な細かさで説得させたんだからすごい作品だったと思う。

それにしてもエンディングテーマの声が桜井和寿みたいに聞こえて、しかも主人公の息子役が歌ってるそうで、そうなるともっと歌詞を噛み締めるべきだったと思います。あと、コリア語と日本語って同じ意味で似たような発音ってあるんですね。

よっぽど面白くないと4点台は付けないけどご祝儀も含めて。