メシと映画のK佐藤

パラサイト 半地下の家族のメシと映画のK佐藤のネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

本年度のオスカーを席巻した本作。
最近のオスカーは娯楽性の強い作品でも作品賞を獲れるようになって来ましたが、それでも本作の様な映画が獲れた事に良い意味で驚かされました。
本作は通な人が高評価する小難しい話では決して無く、コメディ、サスペンス、ホラー、社会派ドラマとあらゆる側面を持つ作品です。
このジャンル分けするのが難しい作りが、個人的に面白いと感じた部分です。

主人公の半地下の物件に住む貧困層キム一家が富裕層パク一家に身分を偽って取り入り(寄生)し、貧困から脱出する様を描く中盤までの展開は、韓国の貧富の差の実態を可笑しくみせるコメディで、こんな感じで映画が進んで行くのかなと思いきや…。
実はキム一家には既に寄生していた、半地下よりも深い地下の住人がいた事が判明してからの豹変っぷりが凄まじかった。
底のない貧困、富裕層と貧困層は同じ人間でありながら全く別の生き物(物語のターニングポイントとなる豪雨が、キム一家にとっては半地下の住まいや自身の命を脅かす自然現象であるのに対して、パク一家にとっては息子のサプライズパーティーを開くのに良い環境を整えてくれた恵の雨となったと云う両者の認識の違いが好例)であり両者が分かり合う事は決して無いと云う現実…あらゆる負の要素を噴出させ、最後はキム一家の大黒柱ギテクが感情を爆発させてパク一家の家主ドンイクを殺害する顛末を迎えます。
喜劇と思って観てた作品が、実はとんでもなくグロテスクな物語であった。
この猫被りっぷりが個人的に本作で印象的でした。
コメディと思わせておいて後ろから鈍器で殴りつけるような感覚…個人的に高評価している「帰ってきたヒトラー」と共通項の多い作品に思えました。

地下を貧困のメタファーにしている、そんな地下物件しか貧困層は住む場所が無いのに対してパク一家の地下室は北からの核攻撃に備えたシェルターであると云うメタファーの更に上に置かれた皮肉、キム一家の長男坊ギウが友人から貰った庭石やモールス信号等の伏線の張り方、寄生しているのは一見するとキム一家やキム一家より先にパク一家の地下室に住んでいたグンセの様に思えるけど貧困層の働きで富裕層の生活が成立していると考えると本当の寄生虫はパク一家ではないかと考えさせられてしまうタイトルに込められた皮肉と仕掛け等々…作品の作り・組立方がイヤらしい位に匠だったのも見事でした。

凄惨な事件の現場となったパク一家の家の地下室にギテクが誰にも気付かれずに隠れ住み、その家を金持ちになったギウが買い取り、父子が感動の再会を果たす…感動的なエンディングだと思いきや、実はそれはまだギウが頭の中で計画していた事象であったと云うある種の夢落ちになっていたのも、貧困層は夢見る事しか出来ないと云う現実をまざまざと見せつけられると共に安易なハッピーエンドとならならいどんでん返しになっていてほろ苦い。
結末まで油断出来ないとは…😅

展開も作りも一級品。
本年度のオスカーを席巻したのも納得の一本でした。