ショッキングな描写が多く一緒に見る相手を選ぶ。(子供には見せたくない)
それでも、この映画は面白いから興行収入が30億を超えた。
私も、久し振りに一瞬も退屈せず最後まで映画に集中できた。
一見韓国の格差社会や貧困問題について描く社会派映画のように見えるのは、人間の描き方があまりにも独特で微細で強烈で、俳優たちも演技派を揃えているからだろうか。
確かに社会的風刺には富んだ映画だが、物語はもはやSFかと思うほどの非現実であり、韓国貧困層の現実の暮らしや心情を扱った映画ではない。格差からもたらされた人の心の歪みを半地下の家族というシンボルに投映しているに過ぎない。
---------ここから先はネタバレを含みます-----------
興味深いのは、半地下家族がバラバラになった後、最後のシーンで息子が誓う場面である。
彼は半地下的なパラサイト人生から脱却する意思を固めたように見える。お金を手に入れれば家族で幸せに暮らせると夢見るようなエンディングであるが、ここがなかなか重いトーンで描写されている。
学歴もなく、大金を稼ぐなど普通では叶わないだろう。万が一叶ったとしても、人に寄生し、人を殺め、自分の罪からも逃れた最低な父親を息子自身がパラサイトさせ続けるだけのことだからである。
どうもこれじゃ、息子頑張れ!という気持ちにはなれない。
このシーンからも、この作品はこの半地下家族のことは侮辱し、嘲笑するべき対象として扱っているように思える。
しかし、この映画が愛のない作品なのかというと、そうではない。父は無職で「失敗しないためには、何も計画しなければいい」とか言い放つダメな父だが、それでも、この家族は父親を敬っており、その一家の絆はもの凄いのだ。
この映画の悲惨な部分や醜悪な部分も鑑賞に耐えるのは、この家族の無条件で強固な絆が美しいからだろう。
こんな強い家族も、こんな映画も観たことがなかった。この日本では。だからこそ、この映画は凄いんだろう。