このレビューはネタバレを含みます
美しさと汚さ
無垢と残酷さ
埋められない格差
笑いと恐怖
サスペンス、と一言では片付けられない、玩具箱のような映画。
現実社会のシビアなドラマとユーモラス、トラウマになりそうなスリリングなサスペンスなどあらゆる要素を混ぜながら起承転結にまとめられている構成が巧みで、韓国映画は今こんなに凄いのかと観賞後感激した作品。
テーマは重い。にも関わらず、しっかりストーリーに緩急があり、あくまで「これは映画」というエンタメ要素をこれ程ふんだんに盛り込み1つの作品として完成されている。
これを邦画でもし落とし込んだ場合、偏見かもしれないがドキュメンタリーやドラマ調に偏ってまとめられてしまいそうな気がする。それが好みという人もいるだろうし、この作品も、万人受けとは思わないけれど。
心理描写も丁寧で、貧乏家族が入り込むギャグのような展開や、お金持ち一家の奥様の素直さが豊かな人の平和さを纏っていて可愛らしい一方で、
埋めきれない壁への絶望感をしっかり合間に見せられる描写は、胸の奥がザワザワする。
お金持ちの一家がもっと嫌な人達であれば文句の付けようもあるけれど、極端に悪い人達でも無い。むしろお手伝い達(貧乏家族)への接し方は優しい。それでも、裕福であることで根底にある偏見が、ご主人本人がどこまで自覚しているか分からない位のレベルでも垣間見える瞬間に、貧乏家族のお父さんの心を少しずつ蝕んでいく。
「雨が降って嫌ね」位のレベルで富裕層なら片付けられる雨は、地下で暮らす貧困層にとっては死活問題。洪水で汚水を浴びまくりながら、必死に戦う。
この辺の対比も、とても絶妙に表現されていた。
見終わってから、始めは気付かなかった「点」だった謎のいくつかが「線」として繋がってきた瞬間、下手なホラーを見るよりもきっとゾッとしてしまう。そのゾクゾク感も是非この映画で体験してほしい。