凛太朗

パラサイト 半地下の家族の凛太朗のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.6
カンヌではパルムドール、オスカーでは作品、監督、脚本、国際長編映画賞を獲るという偉業を成し遂げた映画なだけあって、エンタメ性、アート性、社会的メッセージ性において、高次元で統制の取れた映画で、素直に面白いなと思いました。

韓国には半地下と呼ばれる北からの攻撃に備えた防空壕を居住地にした場所がいくつも本当に存在しているのらしいですが、そこに住む人たちは紛れもなく貧困層だそうで。
そして半地下に住う夢に敗れたり事業に失敗してたり受験に失敗してたりする一家4人が、ひょんなことから、ある富豪一家の家庭教師やアートカウンセラー、運転手、家政婦として、少しずつパラサイトしていくのであったが…というお話。

富豪一家の豪邸が上だの下だの区切りだのというものが明確にあって、それが貧富の格差を仕切ったり行ったり来たりする装置としてわかりやすく表現されてますね。
ということで、行き過ぎた学歴社会や資本主義社会が孕む危険性から辿る末路などについて警鐘を鳴らしている作品と言えると思いますが、タイトルのパラサイトは寄生虫、寄生、依存などという意味ということで、人間ってのは多かれ少なかれ、何かに対して依存してないと生きられない生き物ですよと。
寄生虫ってのは宿主なしでは生きていけないんですな。
半地下家族を主軸に描かれているので、その半地下家族に感情移入しがちですけど、富豪は富豪で雇用に群がる貧困層が存在しなければ、お金を生み出すことはできませんよ。などという意味では、労働力などに依存していると言える。
貧困層は当然の如く富豪が生み出す雇用などに依存する。
その格差がヤベーでしょって話であって、だから何?ではなく、気付いてて諦めモードになるのはもっとヤバイでしょって話。

人間も寄生虫と同じで、地球という名の宿主に寄生していないと、現代科学の力では生きていくことができない。
しかし、行き過ぎた物質主義の結果、地球の自然は破壊され温暖化は進み、異常気象で大雨降って大洪水。
水は低きに就く如し。人の心もまた易き流れる。
そして禍福は糾える縄の如しと言える。

半地下一家は何故に4人でそれぞれ富豪に寄生して職を得た段階で、持ち前の家族の絆でお金を出し合うなりして引っ越しなりしなかったんやろか?と。
これは、結局慣れた、或いは染み付いた環境(匂い)に身を置いておくのが最も幸せで安らげる場所だったからなのか、欲に溺れて、所謂普通の幸せではなく、富豪のような資本や物質で満たされた人生を送りたいと思ったのか?
半地下一家は4人で貧しいとは言えども幸せに暮らしてたはずだと思うんですよね。それこそ家族愛という側面だけで見れば、富裕層の一家よりもみんな楽しそうだったはず。
それが、資本によって心まで侵されちゃったら、それこそ本末転倒だよと思うのです。
だって、その染み付いた富裕層が嫌う匂いってのは、あなた達が人として貧しいなりに一生懸命に生きた証でありプライドでしょ?
鼻を摘んでそのプライドをバカにされて踏みにじられてブチ切れるのはわかる。水は低きに流れるという自然の摂理がそうであるように、あんなことになってしまうのもまた、残念ながら当然の結果と言えると思う。
だからこそ、せめて一家で働いたお金を出し合って、普通の賃貸にでも引っ越して、普通に馴染めば普通に暮らせたんじゃないのかなぁとか思ってみたり。
ただし私には普通とは何かということはわからないし、そもそも普通という言葉は嫌いである。
凛太朗

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