松井の天井直撃ホームラン

罪の声の松井の天井直撃ホームランのネタバレレビュー・内容・結末

罪の声(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

☆☆☆☆

風見しんご→わらべ

原作読了済み。簡単に。

これは原作に於ける登場人物の多さ。並びに、史実を基にした時間や場所等、多少の縛りが有るストーリー展開。
それらの情報量のごちゃごちゃ感を、ここまでスンナリと分かりやすい内容にまとめ。尚且つ、エンターテイメントに仕立てあげた脚色が素晴らしいですね。

でも、内容が内容だけにやむを得ないのでしょうが。大量の台詞やナレーションで、説明過多になってしまっているのは本当に惜しい。
比べるモノではないのですが。最近では『朝が来る』が、極めて作家主義に徹したミニシアター系の作品と言うならば。この本編こそ、本質的にはミニシアター系の地味な内容であるにも関わらず。「よくぞここまでエンターテイメントに振り切ったなあ〜!」…と、感心するばかりでした。

原作だと。事件の全容解明は、ほとんどが阿久津ともう1人のパートナーによって読者側に明らかになって行く。曽根はあくまでも、自分の家族周辺の情報しか(確か)得られない。
しかしながら映画本編は、星野・小栗によるW主演作品に他ならない。

その為に、映画の上映時間が丁度半分辺り。1時間と少しを経過した時に、2人のバディムービーに仕立て上げる脚色に至り「いや〜!そう来るか〜!」と思いましたね〜。

何しろ、原作だと。「し乃」の板長が阿久津に対して(取材をしたいなら…と)金銭的な要求をするのですが。それを要求されてはいないが、別な人物へと振り分けた事で。その後の曽根と阿久津のバディ感を増す効果を前面に押し出しており。一見すると何気ない場面ながらも、思わず「やられた〜!」…と。

原作と映画本編共々。昭和を代表する大事件を基に構築されているだけに。ある程度の縛りはどうしても発生しています。
原作を読むと分かるのですが。(原作だと)事件の発生から31年。映画だと、35年あまりもの長い年月を経過していながら。数多くの登場人物達は、当時の記憶がハッキリとしており。誰が誰に向かって何と言ったか…等。その詳細の事細かな辺りは。原作を読みながらも、ところどころで「おいおい!幾ら何でも30年以上も経ってるだろうに?」…と思ってしまったものです。

映画本編では意外とその辺りの疑問点を感じさせない様としてでしょうが、ドンドンとスピーディーに先へ先へと進んでいた気はします。
まあ、それらの疑問に対しては。「当事者なんだから当たり前だろ!」…っと言われたならばやむなしではありますが💦

とは言え、主人公の1人である曽根本人だけが何故だか(事件に関する)記憶が無かったり。
(これも当時6歳じゃ仕方ないだろ!…と言われそう)
何よりも、歴史に残る大事件を基にしているフィクションとは言え。その事件自体が、30年以上も日本の警察が威信を賭けて力を入れながら、犯人へとはたどり着けなかった程の大事件。
それなのに、原作・映画共に。僅かな人数・時間だけの取材で、一気に真相へとたどり着けてしまう、、、と言う辺りは「幾ら何でも」と思う事しきりで(´・_・`)
(だから!元々犯人側に近い人間なんだから当たり前だろ!…って、これも言われそうですが、、、)

まあ、何だかんだと貶しつつも。ここまでエンタメ性に優れ。年齢や性別を抜きにして、誰でもが楽しめる作品へと昇華させた脚色には素直に脱帽するしかありません。

ラスト近く、2人の〝 男の子 〟が。母親の愛情を受けて《心の重荷》から解き放たれた時。今現在の我が身と母親との関係性を省みて、思わず号泣させられてしまいました。だからと言って、点数を爆上げする様な事はしませんが(・ω・`)

出演者の中では、(あくまでも個人的にですが)小栗旬の俳優としての可能性の高さに、ちょっと驚きました。
これまでは、ミニシアター系のこじんまりとした低予算的な作品で映える人…との印象だったのですが。この本編を観て、今後はエンタメ系の超大作でも一枚看板として、しっかりと作品を支えていける実力のある俳優さんなのだ…と認識させて貰いました。勿論、バディとなる星野源も良かった。

梶芽衣子演じる母親は、元過激派の女性党員。
長い年月に渡って、胸の中では社会へ対して反旗を翻していた…って設定には。「おいおい!それ狡いって〜!」…と、思わず叫びたい気分でしたわ(;´д`)

ネットでは宇野翔平の演技が絶賛されている様ですが、彼はどの作品でも素晴らしいので「何を今更!」感が自分には少し、、、

2020年 11月5日 TOHOシネマズ日比谷/スクリーン1