ねまる

罪の声のねまるのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
3.6
「見たくないんです。不条理な事件に巻き込まれた人間が、自分の人生を手放して同じように不条理なことをしてしまったら負けなんじゃないんですか。」

『アンナチュラル』の名言。
この映画に出てくる不条理な事件に巻き込まれた人間たちは、同じように不条理なことをしてしまうわけではない。
でも、大人の都合で、不条理に巻き込まれた子供たちは、、、

この物語の中心は、
グリコ森永事件を模した事件の、
事件に使われた声の子供に主軸を置いている。

大人になってから、自分の声だと気付いた者
親が実行犯で、その後日陰の人生を歩むことになる兄弟。
たとえどんな大義名分を語ろうと、誰かの人生に不条理を突きつけるようなことはあってはならないんだ。

視点というのはどう感じたかを考える上で大事で、加害者、被害者、関係者さまざまな視点から描いて、問いを投げかける作品もある。この作品の場合、実在の事件を元にしているので、ある意味覚えている全ての人が被害者という構図なので特殊だが、加害に加わった人という視点なのが独創的。
幼い頃に自分の声が犯罪に利用されていたと知る星野源の視点とが、事件の真相に迫ると言う立場と、事件を追うという立場だけでなく新聞の社会部のあり方を模索する小栗旬の事件と報道の視点が絡み合っている。

星野源だけでなく、同じく声の使われた子供たちを演じた原菜乃華ちゃんと、宇野祥平さんが何より素晴らしかった。
若葉竜也をはじめとして塩見三省、水澤紳吾短い時間で彼らの視点に確かに介入した人物を作り上げる役者陣。

原作も、元にした事件もある作品だけど、野木亜紀子さんの脚本だなぁと、冒頭アンナチュラルではじめたのもそうだけど、思いましたよ。

そして、少し実存主義について学んでみたくなりました。哲学興味ありな人間です。
ねまる

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