Fuyuki

罪の声のFuyukiのネタバレレビュー・内容・結末

罪の声(2020年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

グリコ事件がモデルの映画という認識も無く、何気なく鑑賞。

事件当時は小学生という事もあり、この物語の被害者と同世代。
幼いながらも、この事件の記憶は鮮明に残っており、ワイドショーや新聞、親などが騒いでいた記憶がある。
また、死亡者が出た訳では無いが、無差別を対象とした犯罪という事が幼いながらも、死というものが身近にあると感じられた事件としても印象深い。

事件の真相は全くわからないが、この物語の様に、株の空売り目的の劇場型犯罪という設定がハマリすぎているため、ノンフィクションなのではないのか?と感じてしまうぐらい精巧なシナリオができている。

そのサスペンス的な要素だけだったら、感想を残すまでもなく、エンタメ作品だが、本作は、そこに無自覚ながらも巻き込まれた子供たちの苦悩と悲惨な末路が描かれ、ヒューマンドラマとしての演出が一番の見どころではないかと思う。

現在の日本に影を残す団塊世代の学生闘争が事件の動機として描かれる。
戦後、敗戦国として再建してきた日本に対し、主体性の無いフラストレーションを持ち、葛藤していた世代の人々がヤクザのシノギに便乗する形でこの事件は起こる。

脅迫の声として、利用されてしまった犯罪者の親を持つ子どもたちの人生が描かれ、不遇という言葉だけでは、語ることができない悲惨なその後が暴かれる。

そのドラマがどうかなどは、各々の感想かと思うが、団塊世代が団塊ジュニア世代に大きな影を残してきた感覚が、団塊ジュニアの自分としては、腑に落ちる事があり、この作品への共感に繋がった。

戦後世代の大きな矛盾を抱えている日本の有り様が露呈する作品だと個人的には感じる。
Fuyuki

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